2020年、特定外来生物指定によるザリガニ規制のまとめ
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2020年11月にて、環境省の方でほとんどのザリガニ類が特定外来生物に指定される予定で、まもなくペットとしての飼育が不可能に。
それについて、いつから何が規制されるのか、流れや背景などを、整理してまとめました。
規制の概要
2020年6月22日~6月26日の間に行われた環境省「特定外来生物等専門家会合(第12回)」にて
アメリカザリガニとニホンザリガニ以外は特定外来生物として指定が適当である
と判断されました。
特定外来生物として規制されたイキモノは飼育・運搬・販売などが禁止になる強い規制です。
※これに反する場合「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金」という重い刑罰も(外来法:第三十二条)。
2020 年11 月2日より特定外来生物に指定され、飼育者にとってはもう間もない日程での指定入りとなります。
背景や流れ、具体的な判定種などは以下のURLの”特定外来生物等専門家会合の第12回”の項に関連資料がありますが、こういう資料は分かりづらいのでかいつまんで説明します。
【外部リンク】特定外来生物の選定(専門家会合資料・議事録等)| 日本の外来種対策 | 外来生物法
2020/10/13追記:環境省よりチラシ出ました!!→【外部リンク】環境省のリーフレット
特定外来生物へ指定予定のザリガニ
規制対象としては
- ザリガニ科の全種
- アメリカザリガニ科の全種 ※アメリカザリガニを除く
- アジアザリガニ科の全種 ※ニホンザリガニを除く
- ミナミザリガニ科の全種
以上の通り明記されており、流通している種(アメザリ・ニチザリ以外)ならどの項目にも引っかかってます。具体的に流通している種を書き出してみたのが↓。
名前 | 該当分類 |
---|---|
ミステリークレイフィッシュ | アメリカザリガニ科 |
フロリダブルー (フロリダハマー) (アレニー) |
アメリカザリガニ科 |
エノプロスターナム | アメリカザリガニ科 |
バスキューザ | アメリカザリガニ科 |
ウォチタ | アメリカザリガニ科 |
スピクリファー | アメリカザリガニ科 |
ドゥプラッチ | アメリカザリガニ科 |
ヒルスタス | アメリカザリガニ科 |
ラマシー | アメリカザリガニ科 |
アパラチコーラ | アメリカザリガニ科 |
パイギマヌス | アメリカザリガニ科 |
カテマコエンシス | アメリカザリガニ科 |
ペニー | アメリカザリガニ科 |
フォーミス | アメリカザリガニ科 |
マニンギ | アメリカザリガニ科 |
シュフェルディ | アメリカザリガニ科 |
メキシカンドワーフ (CPO) |
アメリカザリガニ科 |
テクサナス | アメリカザリガニ科 |
スケミッティ | アメリカザリガニ科 |
一見弱そうなドーワフザリガニであるシュフェルディやメキシカンドワーフクレイフィッシュも今回の規制対象入り。
というかザリガニの定義ってザリガニ下目のうちミナミザリガニ科・ザリガニ科・アメリカザリガニ科・アジアザリガニ科なんで、今回の規制範囲と同じで要はザリガニ全てなんですよね。
(※今回の規制ではアメリカザリガニとニホンザリガニは除きます)
ザリガニ下目は他にもアカザエビ科、オサテエビ科、ショウグンエビ科がありますがそれら全ては海産です。
アメリカザリガニは今回の規制外
最も多く流通しているアメリカザリガニは今回の指定には入っていませんので、アメザリは引き続き変わらず飼養することができます。
アメリカザリガニは様々な品種名、商品名が付けられているので色々ありますが・・・、環境省のチラシでも表記されている代表的なものがコチラ。
- レッドザリガニ
- スーパーレッド
- オレンジザリガニ
- ブルーザリガニ
- コバルトクラーキー
- ブルームーン(ナイトメアゴースト)
- ホワイトザリガニ
- シザー
- ゴールデンキング
- ゴースト(ジャパンゴースト)
- タイゴースト・・・etc
これらの名前が付いたザリガニはアメリカザリガニであるため今規制では関係ありません。
規制の流れ・背景
アメリカザリガニとニホンザリガニ以外は全面禁止予定であるため、愛好家からは「反対だ!!」「なぜアメリカザリガニだけなんだ!?!」等と大きな反発が出ています。
とはいえ関連資料を読んでみるとちゃんとした背景理由が書かれておりますので、頭の中で整理したのを解説していきます。
ミステリークレイフィッシュの定着・遺棄問題
まずは第一にミステリークレイフィッシュの存在が大きく背景にあります。
ミステリークレイフィッシュはメスだけで勝手に増えるという珍しい特性からペットとして飼っている人も多いザリガニです。
しかしながら単為生殖で増えるという特性上、飼育者が逃してしまったらいっきに増えてしまうのではないか?という大きな懸念を持っており、実際にも海外ではドイツ、オランダ、マダガスカルにて再生産が確認されてます。※1
国内では2006年に北海道、2015年に愛媛県の野外水域で確認されていました。※1
(しかもミスクレ飼育してないとアメザリと見分けられないレベルでよく似ているので、見逃してるのではと指摘アリ)
また数千円で手に入れられるという手頃さもあり、そういった背景よりミステリークレイフィッシュは我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リストに指定されています。
【外部リンク】参考資料4:我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(昆虫類等陸生節足動物、無脊椎動物、植物)
実は2019年の頭かその前ぐらいからメディアより”2019年夏頃には特定外来入り予定”と報道がありました。
しかし実際には2019年夏には特定外来入りせずに何も起こらないまま経過して、いつ特定外来として入ってもおかしくはない状態でありました。
※1
議事次第・資料「資料3」のP28~P29より
【外部リンク】特定外来生物等専門家会合(第12回)議事次第
ニホンザリガニの驚異であるザリガニペスト
資料を読んでいて伝わってくるのが「ザリガニペスト(Aphanomyces astaci)」への強い警戒。
外国産ザリガニ類の輸入に対する一番の懸念は病原体(ザリガ
ニペスト)の媒介であり、将来的にはザリガニ類の輸入を全て規制することについても検討が必要。
ザリガニペストとはカビの仲間でありながら世界の侵略的な外来種ワースト100入りしているほど危険な外来真菌です。
(ブラックバスとかマングースと同類)
どれぐらいヤバいのかというと一度ザリガニペストが在来種であるニホンザリガニの住む水に侵入したら、水系のニホンザリガニが壊滅してしまうほどの危険性を持っています。
しかしながらアメリカのザリガニ類は耐性があるゆえに菌を持っており「逃したザリガニが池に入り、ニホンザリガニを死滅させてしまう」、こういったことが起こり得るのです。
アメリカザリガニ科のいくつかの種はヨーロッパ諸国でザリガニペストを蔓延させ、在来ザリガニの個体群を地域的に壊滅させるほどの大きな影響を与えている
ミステリークレイフィッシュも含め現状販売されている海外のザリガニはザリガニペストに耐性を持つものが多いことから、危険性が高いと述べられています。
そもそも多くが未判定外来生物
実は市場で流通している海外ザリガニはほとんどが「未判定外来生物」。
※アメザリは判定済み
未判定外来生物とは簡単にいうと国内で害をもたらすかどうか判別しておらず、輸入制限がかかっている外来(国外)のイキモノ。
海外の生き物を輸入する場合は一度主務省令で届けた後、生態系に被害を出さないと判定を貰ってから輸入が可能になります。
逆に被害を出すと判断されれば特定外来生物に入り、輸入が拒否されます。
しかしながらアメリカザリガニを除き日本で販売されている海外のザリガニは実際全てが未判定外来種の段階のままなのです。(フロブル、エノプロ、バスキューザ・・・etc)
本来国内には存在していないはずの未判定外来生物の指定種が国内流通していることから、その扱いについて検討が必要。
本第12回の会合にも本来国内には存在していないハズと意見があり、それらも含めての決定が行われたようです。
未判定種の輸入届け
ミステリークレイフィッシュもそうですが今回の特定外来入りは未判定種の輸入届が出されたのも大きなトリガーだと考えます。
特定外来生物等専門家会合(第12回)議事次第 の資料2のP3によりますと、
未判定外来生物の輸入の届出が出されたザリガニ類25 種類(3 属、22
種)については、生態的特性、被害に係る科学的知見及び近年の流通実
態から、特定外来生物に指定することが妥当。
とあり、未判定外来生物の輸入届が出されたとあります。
輸入届けが出されましたら先述したとおり、生態系に被害を及ぼすかどうか判定された後、害があると判定されれば特定外来生物になります。
上の記載によりますと、届け出が行われた25種類に関しては特定外来生物として判定されました。
しかしながら加えて
届出のあった25 種類のみを指定すればその他の種が流通することが予想されるが、外国産のザリガニ類には共通する潜在的なリスクがある。そのため、届出のあった種のみを指定するのでは不十分であり、現在、未判定外来生物とされている全てのザリガニ類を特定外来生物に指定することが妥当。
と記載されていました。
今までは未判定種が未判定のまま国内で取引されてきましたが、今回の輸入届けを受けてザリガニ類は全て特定外来生物にすべきと決定したようです。
以上が背景・流れのまとめですけど、いやー結構背景あるなぁ・・・と言う印象です。
アメリカザリガニも規制方向へ
今回特定外来生物に入らなかったアメリカザリガニも知らない話ではありません。
特定外来生物としての条件を満たすので特定外来生物に指定したいものの、社会的に考えて混乱を引き起こすため見送りとなっています。
アメリカザリガニについては、生態的影響(あるいは生態的特性)としては特定外来生物に指定する要件を満たしているものの、現行法下において指定した場合、飼育個体の大量遺棄が懸念されるなど、社会的な混乱を引き起こすことが懸念されるため、今回の指定は見送ることとされた。
今後はアメリカザリガニについても普及啓発の強化や、次期法改正に向けて対応方法を検討ともあり、いずれ規制されてもおかしくはないでしょう。
今後の流れ
今後の流れとしては以下の通り。
- 令和2年11月02日より、特定外来生物入り(飼養・販売・運搬等不可)
- 令和3年05月01日まで飼養許可の申請期限
11月2日より特定外来生物になってしまうので、引き続き飼うつもりが無い方はそれまでに殺処分など然るべき措置を行いましょう。
300万円以下の罰金または3年以下の懲役に課せられてしまいます。
引き続き飼養する場合は令和3年5月1日までに申請を行う必要があります。
具体的な繁殖防止措置・飼養施設などについては未だ環境省の方で詰めている状況のようで、11月末には具体的な確定情報が出るとのこと。
環境省より情報は随時出していくということで、引き続き飼育したい飼育者は頻繁にチェックしたいところです。
引き続き飼う場合の手続き
特定外来生物として指定された際、指定される以前から飼っているのに限り申請を出せばペットとして飼育可能になります。
僕は別の生き物(ガー科)で手続きを行った経験がありますが、「逸走防止措置」「繁殖防止措置」を実施していれば指示されたとおりに書類を作れば基本的にそのまま通ります。
その時の流れ的には
- 特定外来生物として指定
- 指定より半年以内の間に申請して許可を頂く
- 許可証の受理
- 写真送ったり指定措置を行って書類提出
こう書いてしまうと簡単そうに見えますが、申請書類は分かりにくく図面などの書類も添付する必要があり、面倒で難しい・・・。
慣れてしまえば難しくはないのですが、僕も初めて申請したときは管轄事務所に電話で色々聞いてはじめて申請できたのでハードルは低くないと感じます。
参考程度にガー科で提出した時の情報を簡単に書いておきます。
用意する書類
環境省のホームページのコチラ に申請に関する情報が記載されています。
そちらより申請書がpdfとword形式でダウンロード可能です。
上記申請書を記入し、飼養施設の図面を作図。
そして飼養施設の写真を撮影。
これら書類を揃えて管轄の環境事務所へ提出する、といった流れです。
より詳しいことは以下の記事にありますので、ご参考までに。(記事目次の「許可申請の方法と手順」にあります。目次から飛んで下さい)
個人的な所感・考察
多分どこかで規制されると思っていた海外ザリガニですが、なんともまぁ・・・とうとう来ちゃったか・・・という感じです。
個人的には昨年ミステリークレイフィッシュが特定外来生物入りしなかったのが不思議ではあるんですけど、今年同時に全部規制されるとは正直驚きました。
とはいえ特定外来生物に指定された理由も妥当だと思いますし、規制されるべきものは規制した方が良いと思っています。
そもそも未判定外来生物が国内で出回ってるってかなりおかしい状態だったんですよね。
誰かが輸入届を出したら終わる、そんな状況でございました。
ミステリークレイフィッシュは数千円で取引されてましたし、今回全部規制される(予定)なものの、生態系にとって驚異的な生物が手頃に手に入る状況は無くした方が良いのではないかと。
アメリカザリガニについては今回見送られてますが、今後は規制のための活動は強めていく方向になるようです。
個人的にはまず「アメリカザリガニは侵略的な外来種である」と少しずつ社会的に浸透させ、意識を変えてから規制されるのかな?と思ってます。
ちょっと心配なのがアメリカザリガニ以外で飼えるのがニホンザリガニのみになるわけで、ニホンザリガニの乱獲に繋がらないか?ということ。
ちゃんとした愛好家なら分かると思うんですけど、北海道とか東北に生息している冷水性のザリガニなので、高額な水槽用クーラーやワインセラーが必要になります。
そもそも寿命とかも性成熟とかも全然異なっててアメリカザリガニとは違う飼い方をせないかんのですが、同じザリガニとして飼えると思ってネットオークションとかで購入しちゃう人が多いと変な業者が乱獲するんですよね。ホント。
加えてニホンザリガニはザリガニペストで壊滅状態になりますから、アメリカザリガニがいた池などで使った網とか靴とか使ってたらホント死滅に繋がりますので・・・。
一番良いのは買わないことだと思います。まぁ注意喚起を・・・。
(ニホンザリガニも保護強化してほしいですね。意味合いは異なりますけど特定第二種国内希少野生動植物種入りしてくれないかな~~)
とりあえずアメリカザリガニは(今は)規制に入りませんでしたし、アメザリだけでも沢山の魅力的なカラーバリエーションがあります。
今後ザリガニはアメリカザリガニ1本で楽しもうと水槽配置を考え中です。
・・・なんともまぁ急な規制ではありましたが、まぁこんな所感であります。
・
・・
最後に言うなら・・・
フォーミス飼いたかった~~!!!(泣)
※本記事は2020年10月時点の情報です。
↓環境省のチラシをシェアしておきます。元データはコチラ(環境省)より
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この記事へのコメント
うちの地域(関東)の幼稚園や小学校では、夏になるとザリガニ採りという野外授業があります
子供たちが普通にアメリカザリガニを採集し、飼育しているのです
それほど、アメリカザリガニは日本人や日本地域に定着しきってしまったといってもいいでしょう
今更規制しても効果は不明ですし、採集して持ち帰ってしまった子供たちや保護者に刑事罰を与えるのか?という問題が各地で発生するでしょう
ただ政治家が表立って「今さら規制しても意味ないから放置しとこう」なんて口が裂けても言えませんから、
とってつけたような理由で見送ったと推測しています
愛好家からは「まずはアメリカザリガニから規制しろ」という声も出ていますが、
前述のような現実を見ると、環境省の判断は理にかなったものだと思います
第二第三のザリガニの定着の防止できますし
ニホンザリガニも保護強化も併せて行うのもやってほしいですね
フロリダブルーも飼えなくなるのか…人生で一度でもいいから飼育してみたかった…
まぁ、アメザリが規制されてないだけありがたいと思った方が良いのかな。