【専門家の監修付き】ディスカス飼育ガイド
ディスカス愛好家の監修・協力によるディスカス飼育ガイド。
「熱帯魚はいくつか飼育できているが、ディスカスを飼い始めたい」というビギナー向けに飼育設備・エサ・水温・水換えなどの飼い方を解説しています。
はじめに
熱帯魚の王様、ディスカス。
昔は多くの熱帯魚飼育者がディスカス飼育にのめりこんでいました。
現在は水草水槽が主流になっており、残念ながら水草水槽と相性が悪いディスカスは最盛期ほどの人気はありません。
しかしディスカスが持つ観賞魚としてのポテンシャルは”熱帯魚”飼育にとってひとつの到達点といえるのではないかと思います。
本記事はディスカスを始めたい、飼いたいビギナーのための飼育ノウハウを僕の飼育経験に加えディスカスマニアである魚類生態学者の[佐藤 駿]氏に協力・監修のもと執筆させていただきました。
この記事の監修者情報
佐藤 駿
魚類生態学者
魚類(特にカワスズメ科魚類)を対象とした、行動・認知・進化に関わる研究者。もちろん自身が愛するディスカスの研究論文も執筆。
ディスカスコンテストに出品するのはもちろんのこと、飼育スペースがなくなれば自宅の風呂でディスカスを飼育するほどの熱狂的ディスカスファン
こんなんしてる人↓
最近のネット記事情報は怪しい
またネット上で、「ディスカス 飼い方」とかで検索するとプロのライターが書いた記事がよく出てきますが、実際は間違った情報も多いと言えます。
ネット上から適当に調べて書いてるであろう薄い内容なのと、写真が通販の商用画像とかフリー素材のものばかりで自分が飼ってるであろう写真が一枚もなく飼ったことなくて書いてるんだろうなと感じさせられます。
その手の記事はほぼディスカスをよく知らない人が書いてますので、それを踏まえてお読みいただけた方が理解が早いかと思います。
飼育設備
ディスカスの飼育例としてはこんな感じ。
「水槽」に「上部式フィルター」と「温度調節ができるヒーター」を用意すればOKです。
あとコケ取りするプレコがあれば尚良しです。(理由があります。後述)
水槽
ディスカスは最終的には15cmほどになり且つ体高がかなりある魚になりますので、ある程度幅に加え高さがある水槽が必要になります。
オススメなのは
- 45サイコロ(45x45x45)
- 60ワイド(60x45x45)
これらのサイズ水槽は、ディスカスの育成から繁殖まで十分こなせるのでオススメです。
とはいえ奥行きが45cmある水槽はハードルが高いかと思うので、60cmレギュラーサイズや45cmレギュラーサイズで手頃に始めてみるのも良い選択です。
(先程の画像も奥行き30cmの60cm水槽です。30cm水槽は狭い)
よく売られている小さなディスカスを育成して鑑賞するならほどほどの水槽でも飼養に耐えれます。
ただ繁殖まで考えた場合、親魚と大量の稚魚を育成することを考えると60cmレギュラーだと狭い、ということは覚えておきましょう。
収容数の目安
フルサイズのディスカスの場合、以下が収容の目安。
- 45cm:1~2匹
- 60cm:2~3匹
- 60ワイド:2~6匹
あくまでアダルトまで育ったディスカスをいきなり飼育する場合なので、若い小さな個体はより多く収容できます。
最初は「45~60cm水槽で小さいの5匹までに抑える」とかで始めてるのがオススメ。
もちろん60cmワイド水槽で少数で飼えるならそれに越したことはなのですがハードルが高くなりますし、最初からはうまくいくとは限らないため、まずは手頃な水槽でまずチャレンジしてみるのが良いかと思います。
逆に最初に迎えたディスカスが、順調にフルサイズまで育てられたら大したものです。
(それぐらい初手から大きくするのが難しいということ)
フィルター
フィルターはろ過能力の高くメンテナンスがしやすい上部式フィルターを使用します。
理由として、ディスカスのメインのエサとなるディスカスハンバーグは油分や細かいカスなどが多く、フィルター一層目のスポンジがすぐに詰まってしまうため、フタを開けてすぐメンテナンスできる上部式フィルターが都合が良いのです。
外部式フィルターも強力なフィルターではありますが、ロック外して本体を洗面台に持っていき・・・という工程があるのでオススメしません。
収容数により3日に1回とか掃除する時があり大変面倒です。
ろ材について
上部式フィルターに使用するろ材は基本的に粗目スポンジのマットとウールを重ねたものを使用します。
粗めスポンジマットによりエサの残りカスや油分などを絡め取らせ、ウールにより生物濾過を行います。
そのためウール部分は基本的に交換せず、一層目のスポンジマットを洗って使い回すという感じでメンテナンスを行います。
↓これにウールを増強したものを使用
ウールの代わりにリングろ材やエーハイムのサブストラットを使用しても良いのですが、高価ですしウールを重ねて厚みを作ればそれで十分かと思います。
↓こういったウールを増強して生物濾過を確保
スポンジフィルターとの併用がオススメ
またサブフィルターとしてスポンジフィルターを設置しておくとベストです。
スポンジフィルターを日頃から付けておけば、上部式フィルターのろ材を掃除する際や上部式フィルターのモーターが故障した際にろ過能力の低下を軽減することができます。
ディスカスはアンモニアの類にめっぽう弱い魚であるため、上部式フィルターのろ過能力が落ちた際にサポートしてくれるメリットは大きいです。
また溶存酸素量の増加により高温治療も行いやすくなるメリットもあります。
(高温治療は「その他の情報」章にて説明)
設置するスポンジフィルターはスポンジが2個ついてるのものか、スポンジ1個のタイプを2つ設置するのがオススメ。
スポンジを2個にすることで交互にメンテナンスすることができ、濾過状態の良いスポンジフィルターを常に1個、稼働状態を保てます。
(参考情報:ブリーダーは大きなスポンジフィルターのみで飼育を行う方も多く、スポンジフィルターは濾過性能も高いです)
プレコ
ひとつの水槽につき1匹は掃除するプレコをいれて下さい。
メインで与えるディスカスハンバーグは油分が多く、それがガラス面に付いてしまい時間経過で水質悪化に繋がるためです。
プレコがいればガラス面についた油分を食べてくれるため、水質悪化を防止することができます。
具体的に入手しやすく油取りコケ取りとして活躍するプレコがコチラ。(プレコなら何でも良いワケではない)
- セルフィンプレコ、ヒポプレコ
割とどこでも売ってて安価・丈夫かつ仕事能力最強で定番ルンバ。 - ブッシープレコ
小ぶりなサイズで小型水槽に向いているが、上記プレコと比べるとあまり仕事しないのと死にやすい。
ただし割とどのプレコも大きく成長するとディスカスをいじめることがあるので注意が必要。
「ヒポプレコ>>セルフィンプレコ>>>>>ブッシープレコ」の順に悪さをする傾向があるので、個人的にはセルフィンプレコがオススメです。
(ブッシーは悪さをするのが稀)
砂利や流木について
ベアタンクがディスカス水槽の基本になります。
というのも砂利はメインのエサとなるディスカスハンバーグが隙間に入って汚れてしまうので入れれませんし、流木については驚いて泳ぎ回った時、擦って身体を傷をつけることがあります。
(60ワイドや90ワイドなどデカい水槽は除く)
砂利も流木もないと殺風景に思いがちですが、育ってきたらディスカスだけでもめちゃくちゃ綺麗なのでディスカスだけで水槽が完成します。
(いわゆる魚主体の水槽!)
個人的にはアマゾンソードなどをソイルに植えた植木鉢を隅っこに沈めたりするのはいいんじゃないかと思ってます。
水温
ディスカスの適温は高く28.8度で成長率が最大化するため、基本的には29度か気持ちやや手前に温度を設定します。
というか現地での水温もそれくらい。
これより低い温度になればなるほど拒食・成長不良になるリスクが高くなっていきます。
逆に少し高く30度で飼育する手もありますが、体内寄生虫を駆除するための高温治療の効果が29度から高温にした時と30度から高温にしたときでは、29度の方が効果が高いという背景がありますため29度がオススメ。
※高温治療については後述の「その他の情報」にて解説
なお29度に設定することもそうですが高温治療を行うためにヒーターサーモは34度まで温度設定できるタイプのものを購入するのが必須となりますので、ヒーターサーモを購入する際は抑えておきましょう。
エサ
ディスカスのエサは基本的に3種類のエサを与えます。
- 冷凍赤虫
- ディスカスハンバーグ
- 人工飼料(テトラミン)
冷凍赤虫
ディスカスは基本的に人工飼料を好む熱帯魚ではないため、嗜好性の高いエサを与える必要があります。
最も嗜好性が高いのが冷凍赤虫で、特にお迎え後はこれを中心にして餌付けを確立させることが多いです。
ただし寄生虫の混入や消化が悪いことなどのリスクがあり、次に説明するディスカスハンバーグがメイン飼料になります。
ディスカスハンバーグ
ディスカスハンバーグは牛の心臓を主原料にしたもので、嗜好性・栄養価が共に高くディスカスのメイン飼料です。
また色揚げ飼料が混ぜ込まれた「色揚げハンバーグ」や体内の寄生虫を駆除する薬を混ぜ込まれた「虫下しハンバーグ」などもあり、これらを使うためにも普段からディスカスハンバーグを与えておくことが基本となります。
赤虫より嗜好性は落ちてしまいますが、赤虫と混ぜて与えることにより慣らしたり、エサを与えない日を作ってやったりすることで慣らしていきましょう。
基本的な考え方としては、赤虫よりディスカスハンバーグの方が(嗜好性以外は)優れていると考えて良いです。
人工飼料(テトラミン)
魚の総合フードである人工飼料をメニューに加えることで食事の栄養バランスを良いものにします。
ディスカスは基本的に人工飼料を好まない熱帯魚ですが、人工飼料の中でディスカスがよく食べてくれるのがテトラミンです。
人工飼料は様々なものが販売されていますが、テトラミンが断トツで嗜好性が高めです。
とはいえ冷凍赤虫よりは1段階嗜好性が落ちてしまうため、餌付けも時間がかかりますが最終的には多くのディスカスが食べるようになります。
テトラミンのみはOKか?
テトラミンをバク食いするようになればテトラミンだけでもOKです。
ただ多くのディスカスはテトラミン単食よりディスカスハンバーグや赤虫を交えた方が食べる量が多い傾向があるので、特に成長期にはハンバーグと赤虫は欠かせないですね。
テトラミンを食っているように見えても腹少しまでしか食ってなかったりすることも多くそのような場合、単食にしてしまうと成長不良になりほそぼそと死んでしまうことになります。
テトラミン単食を試みるのはまずは1匹フルアダルトサイズに成長できた実績を作ってからが無難ではあります。
大きな罠テトラ ディスカス
ディスカス用の人工飼料といえば「テトラ ディスカス」がよく売られていますが、餌付けが難しく量も食べない傾向が強いです。
ディスカス飼料と販売されてはいるのですが、硬いのが嫌なのか吐き戻す確率が高く正直ディスカスに向いているとは思えません。
(テトラミンの方がはるかに食べる)
もし他のサイトで「テトラ ディスカス」をオススメのエサとして紹介されてる記事がありましたら、その記事は信じないほうが良いと思われます。
ディスカスブリーダーでテトラディスカス使ってる人見たことありません。そういうことです。
(参考情報:あと何故か赤が色揚げされます。色々と不思議なエサ)
給餌回数・ローテーション
ディスカスは与えるエサも重要なポイントですが、それと同時に重要なのが給餌回数。
生育期のディスカスのエサやりは1日”最低”3回が基本です。
生育期に1日1回しか与えない場合、成長不良になりやすくなります。
給餌ローテの例
社会人向けの1日3回の例はこんな感じ。
- 朝:ハンバーグ
- 夕:テトラミン
- 晩:赤虫orハンバーグ
朝に一番食べさせたいハンバーグをしっかり与え、夕方お腹空いたタイミングでテトラミンを与え、晩にハンバーグか追い赤虫を与えます。
休日など1日何回もエサを与えれる場合の例としは
- 朝:ハンバーグ
- 昼:テトラミン
- 夕:ハンバーグ
- 晩:赤虫
などなど。
これはあくまでの一例でありますので、自身の生活スタイル・餌付け状況・育成方針にあったものにして下さい。
お迎えたてで赤虫しか食わない場合は赤虫メインになるでしょうし、赤虫を好む個体についてはハンバーグとアカムシを混ぜたものを与えたりと臨機応変に換えます。
給餌回数の理想は「食うなら与える」で、状況により1~2時間おきにエサを投与することもあります。
水換え・水質
最も流通している改良品種ディカスは累代飼育を重ねて水質の適応範囲が広くなっており、弱酸性~中性の軟水で飼育可能です。
日本の水道水は中性付近の軟水であることが大体であるため、(改良品種であれば)水道水にカルキ除去を行った水で飼育ができることが多いですね。
厳格な水質調整が必要というイメージが先行しがちなディスカスですが、売られている改良ディスカスは実際のところ意外とすんなり飼育が可能だったります。
ただしお住まいの地域の水道水が硬水だったりpHが高かった場合、あらかじめ貯水水槽でpH・硬度を調整した水を用意するか、濾過槽にピートやソイルなどで水質を調整する必要があります。
まえもって水道水の水質測定を行い、pHが弱アルカリ性ではないか?硬度が高くないか?は一度チェックしておくと良いでしょう。
もちろん現地採取されたワイルドディスカスは水を調整して調子の良くなるポイントを見極め、現地の水質を探し当てる必要性がありますため水質のハードルはだいぶ高くなります。
(もはや別の熱帯魚。逆に言うと改良品種はさほど難しくないということ)
アンモニアに弱い
またディスカスはアンモニアや亜硝酸の類にめっぽう弱い魚です。
生体の数・大きさに対して十分機能しているろ過装置を使用していないと、すぐに調子がガタ落ちします。
水槽立ち上げ初期に濾過バクテリアが機能していないと何も食べなかったり、成長によりろ過能力を超えて調子を崩してしまう、といったことが無いように注意しましょう。
ディスカスは過密に飼う魚ではなく、どちらかというと大きな水槽で少数に留めるような飼い方をする熱帯魚です。
水換え頻度
ビギナーが水質ばかり目をとられて足をすくわれるのが水換え頻度。
生育期のディスカスを育成する場合、最低でも一週間に1回は水換えが必要です。
水換えは代謝をアップさせて健康的なディスカスを育てる役割もあり、逆に水換えをしていないと大きくなれなかったり成長不良になる可能性があります。
個体の調子が良ければ1日1回が理想的で、育て上げたいディスカスならなるだけ水換えしたいところ。
生育しきったディスカスの場合は1~2週間に一度でもOKですが水換えをあまりしない古い水を維持する飼育スタイルだと調子を崩します(エサを食わなかったり痩せてきたりする)。
そのためフルアダルトでも一週間に1回程度は水換えしておいた方が吉です。
一度の水換えの量
換水は一度にほぼ全部換えます。目安としては4/5ぐらいでしょうか。
(ディスカスの上ヒレが水面に出るギリギリまでやったりする)
水質変化に強いということもそうですが元々棲んでる環境が川の本流と雨によりドバドバ水が入れ換わっていますので、同じようにドバドバ水換えするのが基本スタイルです。
ただしあまり水換えをしてないと水槽内のpHがかなり下がっている場合があり、そうすると大量水換えだとpHショックに陥ることがあります。
どちらかというと一度に換える水の量を減らして調節して水換えする、という考えではなく「高頻度水換えによりpHを下げすぎないように保つ」という考えがディスカス飼育のマスト。
なのでより一層水換え頻度というものが肝になります。
※もちろん稚魚や迎えたての弱っているディスカスの場合、部分換水のみにしたり時間をかけて慣らしたりと優しい水換えを行います。
水換えのためのワンポイント
水槽用浄水器とホースリールを使った水換えシステムがかな~り有用な飼育設備です。
最初は市販のカルキ抜きとバケツリレーでも良いのですが、それらを簡素化することで飼育難易度が滅茶苦茶下がります。
なくても良いとはいえ多く水換えを行うディスカス飼育には「浄水器とホースリール」が割と必須級のアイテムだと覚えておきましょう。
(というかディスカス飼育者はほぼ浄水器使ってます)
※上の写真では分かりやすいようにシャワーで注ぎ込んでいますが、気泡が身体につくと嫌がる傾向があるので、通常は泡だてないように水換えを行います。
絶対必要なディスカスの選び方
ディスカスは様々な品種が売られておりまずが、まずなによりも先に状態の悪いディスカスを選ばないことが必要になってきます。
というののも、初めてディスカスを購入する方は大抵ディスカス専門店ではなく一般的な熱帯魚ショップに入荷されているものを購入すると思いますが・・・・成長不良や状態の悪い個体がめちゃくちゃ多いこと。
こういうディスカスを迎えた場合、飼育に問題なくてもエサをあまり食わず、成長不良により半年ぐらいかけてゆっくり死んでしまいます。
他の熱帯魚と比べて「健康な個体を選ぶこと」がその後の育成・長期飼育のためには非常に重要になってきますので、健康な個体の選び方を抑えておきましょう。
選ぶポイント
選ぶポイントとしては色々ありますが、ビギナーが抜けがちなポイントが目の大きさ。
というのも身体に対し目が大きい場合、そのディスカスは成長不良であることを表しているからです。
生育期間に対し身体を大きく出来なかった場合、眼だけが大きくなり結果目がデカい成長不良ディスカスが完成します。
成長不良の個体は成長せずゆっくり死んでいきやすく、仮に成長したとしても短命であったり繁殖行動をしなかったりしますので、そのような個体を避けることは非常に重要なのです。
先程の写真を例にとってみると
左の個体は右の個体に比べると目が大きく、あまり良くはないディスカスだと判別できます。
健康かどうかだけで選ぶなら間違いなく右の個体の方がスタート時に失敗しにくいでしょう。
良いディスカスの例
小さいディスカスの場合、この目の大きさ比率が理想形です。
他にもヒレが開いてて元気であること、目や身体が黒くなっておらず臓器に異常がないことが分かります。
ただ残念なことにこのような理想形のディスカスは中々無いのも実情。
実際には以下のレベルぐらいは妥協点となります。
やや成長不良気味とも言えるレベルではありますが、飼育方法次第ではまだ立派なディスカスに育つ余地は十分あります。
上の写真の右個体は下のディスカスに成長できていますので、参考までに。
ハマりがちな不健康個体
逆に不健康なディスカスの例がコチラ。
これは体に対して眼が大きく典型的な成長不良に陥っています。
ディスカスはハンバーグ・赤虫をたらふく食わせて、水換えしまくって成長を促進させて育成するのが基本であります。
しかしショップや問屋で普通の熱帯魚のようにキープし続けた場合こうなりやすいです。
こうなった状態のディスカスはエサ食いが悪く、半年とか1年かけてゆっくり死んでいきますので避けましょう。
この個体はパッと見綺麗ですが、身体の中央部分に影があり骨格が見えておりつまり痩せています。
あと目が黒くめちゃくちゃストレスがかかっていることが分かります。
これもまた拒食状態にあり、少しずつ死にむかっていってるので避けましょう。
わざわざ病気の魚を買わないのと同じく、不健康な個体を選ぶのは避けるべきです。
(ビギナーならなおさら避けた方が良い)
その他の情報
あと細かいもののディスカス飼育に関して、よく使うテクニックを紹介します。
ヘキサミタ症と高温治療
ディスカスは寄生虫に弱い熱帯魚で、特によくかかるのが「ヘキサミタ症」です。
以下の個体は白いフンを出していますが、これは寄生虫の一種であるヘキサミタに寄生された状態であります。
ヘキサミタ症となったディスカスは拒食状態になり、放置すると成長不良・餓死に繋がってしまいます。
ヘキサミタは外部からの持ち込みのほか冷凍赤虫から持ち込むケースもある寄生虫ですが、多くは体内に入っても自己免疫が機能します。
しかしながらお迎えたてや環境があっていなかったり免疫が低下している状態だとヘキサミタに負け発症。
体内寄生虫駆除・治療のためには「高温治療」を行います。
高温治療のやり方
- 塩を水量30Lに対し大さじ一杯入れる
(やらなくても良いが寄生虫殲滅力アップ) - エアーポンプなどでエアーの量を増やす
(高温で酸素が溶けにくくなるため) - 29度に温度設定されている状態から、いっきに34度まで上げる
- その後数日間おく
- 1日につき1度だけ温度を下げる
- もとの水温に戻した段階でエサを食わないのであれば、再度34度まで上げて・・・を繰り返す
注意点としては以下。
- 高温治療を行う前にプレコなどディスカス以外の魚は別の水槽に移しておきます。高温に耐えられません。
- 高温治療中、エサは減らしてください。
- 34度の高温状態は下手に長引かせるとエラに負担がかかるので、数日以上は長引かせないように気をつけます。
- 6cm未満のディスカスに用いる場合はエラへの負担が強いため34度の高温期間を1日未満に留めておきましょう。
高温治療はディスカス飼育ではよく使いますので、このテクニックは頭の隅に覚えておきましょう。
白いフンに関わらず、拒食になって原因がみあたらない場合にもヘキサミタを疑って多用することがあります。
ビビったディスカスの対処
ディスカスが水槽の端っこやストレーナー近くでじっとしていているようなら環境にビビっています。
ビビったディスカスは食が細くなったり拒食傾向があるので、落ち着くように環境の改善が必要です。
落ち着かせるための対処法を以下に述べます。
(スグ出来る順)
ガラス面を囲む
見られる場所が多いと怯えてしまう傾向があります。
特にお迎えたてはこれが顕著な場合があり、バックスクリーンや紙など何でも良いのでガラス面に貼り付けて落ち着かせてやりましょう。
最初は正面以外の3面囲って様子をみて、しばらく経ってもビビるようなら正面も半分囲ってやります。
落ち着いてきたら外していきますが、背面と横左右は常時囲ってた方が落ち着きますね。
照明を消す
明るいと落ち着かないことがありますので、照明を点けてるようなら消して様子を見ます。
ディスカスよりデカい魚をのける
自分よりデカい魚がいるとビビる傾向がありますので、混泳していたらデカい魚をどけてやりましょう。
同じディスカスでもビビりますので、普段から大きいディスカスにいじめられているようならのけてやった方が落ち着きます。
上記3つはスグできますのでこの辺はすぐ実施すると良いです。
水質の改善
水が合っていない場合でも落ち着かないことがあり、特にワイルドディスカスはこの傾向が強いです。
一度pHを測定した後、ソイルをネットに浮かべたり、ピートモスで調整したり色々と錯誤を行って魚が調子良い環境を探します。
ワイルドディスカスはその子が棲んでいた環境にとても影響されますね。
飼育密度のアップ
性格によっては他のディスカスに囲まれていないと落ち着かない個体もいます。
ただし自分より大きいディスカスを入れると逆にそれでビビってしまうことがある点には注意が必要です。
よくある質問と解答
強い水流を嫌うと聞いたのですが抑えた方が良いですか?
よくあるネット記事では強い水流を嫌うと書かれていて止水じゃないとダメだと思い違いをしがちですが、プレコ水槽のように「水中ポンプなどでガンガンに水流がある環境では飼えない」というのが近いかと思います。
上部式フィルターなら全く問題は無いと考えて下さい。
(補足.繁殖においてはストレーナーを壁に向けて、稚魚が成魚のミルクを飲みやすいようにすることはあります)
ディスカスは複数匹で飼育するのが基本だと聞きましたが1匹でも大丈夫ですか?
よくあるネット記事で群れで生活しているので複数で飼わないとストレスがかかると書かれていたりすることもありますが、どちらかというとディスカスは個体の性格によるところが多く、一人の方がエサ食いが良かったり逆に悪かったりするディスカスもいて個性が様々です。
一人の方がエサを独占できてより食べる奴もいれば、他のディスカスにしばかれて痛む奴もいるし、コソコソ上手くやつ奴も。
もしお店で健康そうなディスカスがいるものの1匹~数匹しかいない場合でも、欲しい個体が元気そうであれば個体数は気にしなくても大丈夫です。
改良品種は図太い
また改良が進むにつれ性格が図太くなるという面があります。
最初に迎えるのはかなり改良が進んだ改良品種だと思いますので、そういった面でも神経質に考慮する必要はないと思います。
もし改良ディスカスを1匹で飼育しててエサを食わないといった問題が起こっても、大体の原因は別のところにあるでしょう。
終わりのアドバイス
ディスカスは「しっかり健康に魚を育て上げる」ということが求められる熱帯魚です。
人工飼料をあげてるだけで勝手に育つ魚ではありません。
ディスカスを一般的な熱帯魚のように飼育していると「あまり大きくならず少しずつ減ってしまって全滅してしまった」というケースも聞きます。
失敗しやすいパターンとして以下
- 買ったディスカスが既に成長不良
- いきなり人工飼料をメインにする
- エサの回数が少ない
- 温度が低い
- 水換え頻度が少ない
- 高温治療をするべきタイミングでしていない
なんかは失敗しやすいですね。
成長不良になったディスカスは大きくならず、繁殖行動もできない上短命に終わってしまいます。
そうならないように日頃からしっかりエサを食べさせ、よーく観察して食いが悪くないか?お腹がしっかり膨れたか?などを確認して成長不良にならないように気をつけましょう。
特に重要なポイントをおさらい。
- 選定:成長不良のディスカスを選ばない
- 栄養:高栄養のハンバーグを中心に給餌回数を多くしてできるだけ食べさせる
- 換水:定期的な水換えはもちろんのこと、できるだけ換水を行い代謝をあげる
- 観察:エサの食い、お腹の膨れ状況、高温治療の必要判断などなど
育ってきたディスカスは色的に綺麗なのはもちろんのこと、自分が育てた感動もあり滅茶苦茶面白く感じること間違いなしです。
是非「熱帯魚の王」と呼ばれるディスカスを育ててみて下さい。(=゚ω゚)ノ
・・
あと浄水器による水換えシステムがあると無いのでは苦労が全然違うので、早いうちから導入しておくのを割と本気でオススメします!!(><
文/犬水ジュン、協力/監修:佐藤 駿
※紹介した飼い方はあくまでも一例です。飼育方法はマニアによって様々ですのでご参考までに
この記事の監修者情報
佐藤 駿
魚類生態学者
魚類(特にカワスズメ科魚類)を対象とした、行動・認知・進化に関わる研究者。もちろん自身が愛するディスカスの研究論文も執筆。
ディスカスコンテストに出品するのはもちろんのこと、飼育スペースがなくなれば自宅の風呂でディスカスを飼育するほどの熱狂的ディスカスファン
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この記事へのコメント
ディスカスでの水替えですが、浄水器から入れられている様ですが、水の温度は
あまり気にしなくても大丈夫なのでしょうか?
>>1
気にします。
浄水器を接続しているのはお湯・水両方出る蛇口です。
秋・冬の蛇口の温度は、水温より低いのでお湯を混ぜています。
反面夏は水そのままでちょうど良いくらいです。
※地域差はあり!
(^ワ^)
>>2
回答ありがとうございました。
お湯、水でる蛇口に洗浄器をつなぐ発想はありませんでした。
ディスカスの水槽(ベアタンク)のフン取りですが毎日やったほうがいいのでしょうか?水槽にホウスを入れるとビビッてしまっています、4日に一度は水替え(3/4ぐらい)をやっていますが、水替えの時フン取をやった方がいいのか、毎日フン取をやった方がいいのか迷っています。どちら(毎日フン取か?ホースでのストレス回避か?)に重点を置いた方がいいか。ご教授ください。
>>4
前提として「改良ディスカス」だとしてお話します。
フンは無理に取る必要はありません。
フィルターのキャパシティを超えて無ければ、数日に一度水換え時にある程度回収できれば良いと考えます。
とはいえディスカスが落ち着いているのであれば、毎日ホースで吸ってもビビらせてもエサ食いに影響しません。
水換え頻度が少ないと代謝が落ちるので、成長が遅く成魚になった時の仕上がりに影響します。
pHをあげすぎないのであれば高頻度水換えの方がディスカスは好ましいようです。
個人的にはフンよりも「4日に一度3/4」と、長めのスパンで大きく変えてるのが気になりますね。
一度毎日pHを測ってみて4日の間で、降下し過ぎ→急上昇していないか確認してみてください。(特に水換え翌日と水換え直前)
なおワイルドディスカスは、照明が明るいだけでもビビって食わなくなります。こちらであれば前提が狂うので上の情報はあてにしないでください。かなり繊細なケアが必要です。
^ワ^
>塩を水量30Lに対し大さじ一杯入れる
ディスカスは塩浴0.05%でいいんですかね。あまり聞きませんが
>>6
あってます。
塩はちょっとしたもので、あくまで生体に全く影響無いといえる範囲での投入を行います。
高温治療の主体は普段の水を29度→34度にブチあげることなので、塩は無くていいぐらいです。
塩は水やバクテリア、生体に少なからず影響がありますから全く影響ないだろうといえる範囲にとどめます。
まぁ金魚とかなら強いんで塩ドバァって入れるんですけどね。
水温急上昇+ディスカスですし、メインは温度ブチ上げなのでほんの気持ちです。