ブラインシュリンプの基本ガイド。沸かし方や与え方など
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繁殖させた稚魚にとって最も定番の餌が、孵化させた「ブラインシュリンプ」。
そんなブラインシュリンプの使い方について、沸かし方(孵化)、稚魚への与え方、使う上でのポイントなどの基本を解説します。
ブラインシュリンプとは?
ブラインシュリンプ(アルテミア)は、乾燥した卵を塩水で孵化させる生きエサです。
魚の稚魚は人工飼料をほとんど食べないため、稚魚育成にはどうしても小さな活き餌が必要になります。グッピーなど初めから人工飼料を食べる稚魚もいますが、活餌の方が圧倒的に多く食べ、成魚になった時の仕上がりに大きく影響してくるため、稚魚育成においては活き餌が必須級です。
稚魚用の活餌は色々ありますが、中でもブラインシュリンプは卵の保存ができ、好きなタイミングで簡単に孵化して用意できるのが特徴です。
上は販売されているブラインシュリンプの乾燥卵(耐久卵)ですが、これを孵化させて使用します。
基本的に活き餌は管理が難しいのですが、ブラインシュリンプは孵化させるだけなので「規格外の簡単な活き餌」として定番の稚魚フードなのです。
ブラインシュリンプの沸かし方
ブラインシュリンプの卵は、塩水に漬けることにより孵化します。
孵化用の容器は自作でもいいのですが、今回は「ニチドウ ハッチャー24」を使って孵化させてみますね。(例えばペットボトルにエアーストーンを沈めたものでも良い)
1. 孵化器に塩水を作る
まず孵化器に濃度2%の塩水を作ります。500mlに対し、食塩または人工海水を10g入れます。(食品用でOK)
ハッチャー24では専用のスプーンがついていますので、すりきり1杯で簡単に軽量できます。
続けて規定ラインまで水道水を注ぎます。カルキ抜きは不要です。
これで孵化させる水は用意できました。
2. ブラインシュリンプエッグを入れる
準備した孵化器にブラインシュリンプの卵(エッグ)を使用する分だけ入れます。
ブラインシュリンプエッグはいくつかの会社から販売されていますが、基本何でも良いです。今回は同じくニチドウ製のものを使用します。(写真のものは20g✕5個入りのもの)
これを使用する分だけ孵化器に入れます。今回はハッチャー24に付属してあるスプーンのすりきりで入れますが、量は調節して下さい。
なお水量に対しブラインシュリンプの卵が多すぎると、水が濁り孵化率が低下しますので注意しましょう。(付属スプーンで何杯も入れるのは効率が悪い)
3. エアーポンプを繋ぐ
次に孵化器にエアーポンプを繋いでエアレーションを開始します。エアーポンプは水位より高い位置か、逆流防止弁をつけないと水が逆流する場合がありますので気をつけて下さい。
エアレーションの量は全部の卵が循環する程度です。エアーが弱いと卵が底に沈殿してしまって孵化率が下がり、逆に多すぎると卵が飛んで壁面にへばりついてしまい、これもまた無駄になります。
上記のように、下に卵が沈殿している場合はエアーが弱いので強くしましょう。
このためエアーポンプは流量が調節できるタイプのものを使うか、もしくは分岐コックを購入してエアー量を調節して下さい。
あとは孵化するのを待つだけです。
4. 20~24時間待つ
孵化までの時間は温度によりますが、25度程度だと20時間程度で孵化します。エアレーションを止めてよく見るとピコピコ動いているのがみえるハズです。
なお温度が低いと孵化に時間がかかり孵化率も下がります。理想は28度であり、最低でも20度以上はないと孵化しません。
場合によっては孵化器を水槽内に沈めて保温して下さい。(ヒーターを入れられる孵化器もあります。後ほど紹介)
ブラインシュリンプの与え方
実際に孵化したブラインシュリンプを稚魚に与える方法を解説します。
1. エアレーションを止めて少し待つ
孵化器のエアレーションを停止し、しばらく待ちます。そうすることで孵化ブラインが下に落ちてきます。
2. スポイトで集める
底の方に集まったブラインシュリンプを「スポイト」で吸い取ります。この時一番底は卵が落ちていますので、それは吸わないように底よりちょっと上の方を吸うのがポイントです。(殻は与えると消化不良になります)
なおブラインシュリンプは光に集まる習性があり、孵化直後の遊泳力が低い状態でも一部ながら水面付近に集まります。少量しか使わない場合は、光に集まった上の方にいるブラインを吸った方が楽です。
3 .塩抜きする
次にスポイトで集めたブラインから、塩水をできるだけ抜きます。
スポイトで吸ったブラインを「ブラインシュリンプ用のメッシュカップ」や「お茶パック」などの濾し器に入れ、水道水で軽く流しましょう。
塩抜きをせずそのまま稚魚に与えても一見問題はないのですが塩分は稚魚にとって害であり、塩抜きせずに与え続けると塩分が蓄積して稚魚の生育に悪影響があります。
特に長期間水換えができない稚魚だと段々水槽の塩分濃度が高くなって、あるタイミングでラインを超えてしまい全滅、といったことも起こります。
早い段階で稚魚の水換えが可能になる魚種だとあまり気にしなくてもよいのですが、稚魚であれば塩抜きは基本として下さい。(親魚に与える場合は定期的に水換えを行っていれば大丈夫です)
4. 稚魚に与える
あとは稚魚に与えるだけです。
水槽全体に与える場合はそのまま濾し器でブワーッとまいて良いですし、ピンポイントで与えたい場合は再度スポイトで吸ってから与えます。
ブラインを食べた稚魚はお腹がオレンジ色になるので、ブラインは食べたのが非常に分かりやすいフードです。
稚魚へは1日になるだけ多くの回数与える
上記の手順で、最低でも朝・夕の2回以上ブラインシュリンプを稚魚に与えます。
稚魚にとっては常にエサがあり続けた方が良いので、可能であれば1日に何度も与える方が良いです。実際には数時間程度は水槽で生きてるので朝夕やってたらひとまず大丈夫なのですが、1日に何度もやればそれだけ稚魚の生育スピードは底上げされます。
エサやり回数が多いほど人工飼料を食い出すのも早いですし、最終的な生存数・大人になったときの仕上がりも変わってきますので、苦労する価値はあるでしょう。
使い方のポイント
孵化器は基本2台体制
ブラインシュリンプを孵化させて使い終わった後、同じ孵化器で再度沸かそうとすると孵化するまで時間がかかります。1台の孵化器だけではその間、稚魚にブラインを提供することが出来ません。
よってブラインシュリンプの孵化器は2台体制が基本です。
もう片方が切れる前に2台目の孵化器を作動させ、常にブラインシュリンプを切らさないようにします。
1日経つと性能がガタ落ち
ブラインシュリンプは孵化直後が栄養が一番高いのですが、1日も経てば栄養が激減することには注意して下さい。
鶏卵で例えると、産まれた直後は卵の黄身が大きいのですが、孵化ブラインはその黄身を使って成長を行い、1日経てば黄身はかなり小さくなってしまいます。
魚の稚魚にとってはブラインが大きいかよりも、黄身が大きい方が圧倒的に栄養価が高いので、なるべく孵化直後のブラインを与えるようにしましょう。極端な言い方をすれば2日も経過したブラインはカスです。
そのため具体的な運用としては、2台の孵化器を1日おきで孵化させます。片方が孵化したらもう片方で新しいのを沸かし始め、それが孵化したらもう片方で新たに作り始めて・・・という風に1日交代で運用します。
(1日超過した分は捨てるか、他の魚のオヤツにすると良い)
また日数が経過するごとにブラインシュリンプが成長して縦に伸びてくるので、特に小さい稚魚は食べられなくなるといったデメリットもあるので注意して下さい。これはブラインを食べれるギリギリのサイズの魚、例えばベタやアピストグラマ、カラシン類などの初期稚魚で非常に重要になる場合があります。
開封後の孵化率は落ちていく
ブラインシュリンプは長く保存ができる耐久卵ですが、開封後は湿気・酸素などにより劣化して日数経過ごとに孵化率が下がってきます。
条件にもよりますが開封後1年もすればほとんど孵化しませんので、開封したのがだいぶ前の場合は購入し直して下さい。
なお保管の際は空気をなるだけ抜いて、冷暗所で保管するのが良いです。
具体的な製品
実際にブラインシュリンプの孵化で使用されている定番の製品を紹介します。
孵化器
ニチドウ ハッチャー24
本記事で使ったニチドウの「ハッチャー24」は最も定番の孵化器であり、迷ったらこれがオススメです。
孵化器はペットボトルなどを使って自作してもいいのですが使いにくさがありますし、ずっと使うなら専用に販売されているのがやはり使いやすいです。
「ハッチャー24」はブラインシュリンプエッグが拡散しつつ回収しやすい形状、キスゴムがついており冬場は水槽内にセット可能、塩の計量スプーン付き、スポイト付きなど一通り機能が揃っています。(エアーポンプは別途必要です)
ziss Artemia Blender
ziss AQUAのArtemia Blender(アルテミアブレンダー)は、大型の孵化器でヒーターも入るのが特徴の製品です。
ニチドウのハッチャー24より大量のブライン(約4倍)を孵化させることはもちろん、温度計・ヒーターをセットできたり、下部のバルブを回せばすぐブラインを回収できる高性能ハッチャー。(エアーポンプ・ヒーターは別途必要です)
とはいえかなりデカいのでどちらかというと「グッピー/エンドラーズ」「アピストグラマ」「超小型魚」など成魚にもブラインをあげるような愛好家にオススメです。プレコの稚魚など大量のブラインを冷凍処理する際にも活躍します。
ブラインシュリンプエッグ
ブラインシュリンプの卵(ブラインシュリンプエッグ)は基本的に何でも構いません。
同じくニチドウから発売されているブラインシュリンプでもいいですし、他にもテトラ社のも人気です。両者に孵化率などの違いはあまり感じません。
ブラインシュリンプの加工品に注意
なお購入時に、「ブラインシュリンプの加工フード」と間違わないよう注意して下さい。
紛らわしいのですが「ブラインシュリンプの卵」ではなく、孵化直後のブラインを加工したり、孵化前の黄身だけ取り出したエサが売られています(↓こんなの)。
孵化して活餌として使えるのは卵(エッグ)の方です。併用は良いのですが、生きたブラインシュリンプとは食いつきが圧倒的に違います。
濾し器(こしき)
塩抜きする際の「濾し器」はお茶パックでも良いのですが、やはり専用に売られているカップの方が使いやすいです。
お茶パックからすると割高感はありますが、定番は「スドーのメッシュカップ」です。予算が許せば購入してみましょう。(ミジンコなどにも使えます)
愛好家向けの欄外情報
以上、ブラインシュリンプの基本的な使い方を紹介しました。
さてここからはもっと知りたい愛好家向けのための参考情報を載せていきます。
ブラインシュリンプの種類
一般的に販売されているブラインシュリンプは「ソルトレイク産」のもので、北米で採取されたものです。ニチドウやテトラ社などの一般的なブラインシュリンプエッグはこれにあたります。
これに対し一部の愛好家の中では「ベトナム産」というブラインシュリンプも好んで使われています。
ベトナム産はソルトレイク産と比べ、「サイズがやや小さい」「孵化率が非常に高い」「孵化時間がソルトレイクより長い」のが特徴です。
ソルトレイク | ベトナム | |
---|---|---|
サイズ | 普通 | やや小さい |
孵化率 | 高い | 非常に高い |
孵化時間 | 16-18時間 | 24-26時間 |
価格 | 安い | 高い |
特にベトナム産はソルトレイク産よりやや小さいのが最大のメリットです。これによりブラインを食べれるか食べられないかのギリギリのサイズの稚魚(例えばベタやカラシン類)で非常にマッチします。
また栄養価もソルトレイクのものより高いとされ、孵化率の高さもあいまってベトナム産ブラインは一部の愛好家に人気です。
ただし入手については難しく、小型魚を得意とする専門ショップで一部取り扱われてたり、愛好家の個人輸入のものを分けてもらう程度にしか流通していません。価格もかなり高いので結構なマニア向きにはなりますが、飼育している魚によっては検討してみると良いでしょう。
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