KH(炭酸塩硬度)の概要とその作用について【アクアリウム】
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アクアリウムにおける炭酸塩硬度およびKHの解説。(アルカリニティ)
炭酸塩硬度の概要と、水槽内での役割と操作方法、KHの測定方法を紹介。
炭酸塩硬度(KH)とは?
炭酸塩硬度,KHとは水に溶ける「炭酸塩」と「炭酸水素塩」の濃度です。
以下は炭酸塩の1つである「炭酸ナトリウム」ですが、こういうものが水に溶けていてそれがどれぐらい溶けているかを示します。
炭酸塩はpHを高く保つ作用があり、炭酸塩硬度が高いほど高いpHになりやすくpHが下がりにくいです。
身近なモノでいうと「石鹸」はアルカリ性が失われると洗浄力がなくなりますが、アルカリ性を保つために炭酸塩が原料として入っています。(あとコンニャクの原料とか)
水槽における炭酸塩の作用
魚が排出するフン・尿はpHをグググッと下げる働きがありますが、炭酸塩があることによりpHの低下を抑えます。
例えばpH7.0(中性)からpH4.0まで下がってしまう量のフン・尿が排出された場合、炭酸塩硬度が無いとそのままダイレクトに水槽内のpHを下げます。
しかし炭酸塩硬度がある程度あるとpH7.0→pH4.0まで下がるところがpH7.0→pH6.5となり、pHの低下を抑えてくれます。(これを緩衝作用・バッファといったりする)
このように炭酸塩硬度(KH)があることでpHが安定しやすく、魚を健康的に維持することができるようになります。
特に低pHを嫌うグッピー,プラティ,レインボーフィッシュなどは炭酸塩硬度(KH)が高い環境のほうが飼育が簡単です。
炭酸塩硬度を気にするケース
炭酸塩硬度(KH)とpHは概ね比例関係にありますので、基本的にはpHを見ていれば事足りる場合が多く、測定優先度は低めの水質項目です。
ただしpHを下げたいのに低いpHにならないという場合、水道水に問題が無いかを調べるのに炭酸塩硬度(KH)を測定することがあります。
※造礁サンゴ(SPS)を育てる場合は非常に高い炭酸塩レベルが求められますが、本記事では淡水の熱帯魚・水草をターゲットとしているので省略。
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水道水の炭酸塩硬度が高いと低pHを好む魚は難易度が上がる
お住まいの地域・季節によっては水道水の炭酸塩硬度(KH)がかなり高い場合があり、そのような場合は低pH化するソイルを使っても、下がってpH7.0~6.5という状況が起こりえます。
この場合、pHが6.0以下の低めのpHを好む熱帯魚にとっては好ましくありません。
(例えば一部のディスカスやアピストグラマ、アナバスなど)
かといって水換えの頻度・量を少なくして魚の排泄物によりpHを下げるようにすると、水中には排泄物由来の毒素が濃くなってしまい今度は魚を長生きさせることが難しくなってしまいます。
低pHを嫌う魚にとっては水道水の炭酸塩硬度が高いとメリットですが、かなり低めのpHを好む生体にとっては水道水の炭酸塩硬度が高いとデメリットになるのです。
炭酸塩硬度の測定方法
炭酸塩硬度(KH)は熱帯魚用に売られている試験薬を使って非常に簡単に測定することができます。
なお試験紙(テトラの6 in 1)では誤差が非常に大きいため、測定には適していません。
実際の測定
炭酸塩硬度(KH)の測定は炭酸塩を溶液で溶かし、何滴で炭酸塩が中和したかを判定する滴定方式になります。
実際にテトラ社のKHテストを使って測定してみます。
付属の容器に測定したい水を5mL入れ、KH測定液を1滴垂らします。
軽く振って混ぜると青色か黄色に変化しますが、青色はまだ炭酸塩が残っている状態を示します。
青色だったので再度1滴垂らします。
混ぜると黄色になりました。炭酸塩が中和しきったことを示します。
黄色になるまで2滴必要だったので、この水のKHは2dKHとなります。
(始めの1滴で黄色であれば1dKH、3滴必要だったら3dKHです。滴数=dKH)
こんな感じでKHは簡単に測ることができます。
なお付属の取説書通りでは1dKHの尺度でしか測定することができませんが、測定水を5mLではなく10mLにして滴定を行えば0.5dKHの尺度で測定が可能です。
さきほどの測定水を10mLで滴定すると3滴必要だったので、3÷2で1.5dKHということが分かります。
(色が薄まるため見にくくなってしまうのには注意)
炭酸塩硬度(KH)の参考数値
私の地域の水道水といくつかの水槽で炭酸塩硬度(KH)を測定しました。
アピストグラマ水槽0.5dKHソイル+流木. スポンジフィルター
炭酸塩硬度 | 備考 | |
---|---|---|
水道水 | 1.5dKH | 大阪,春 |
コリドラス水槽 | 1.0dKH | 砂薄敷きとでかい流木. 外掛け式フィルター |
ポリプテルス水槽 | 4.0dKH | ろ材にサンゴ砂. 外部式フィルター |
1つの参考までに。
※測定液は「テトラ Test KH」を用いました。
炭酸塩硬度は先述した通り「炭酸塩」と「炭酸水素塩」の濃度です。
しかしながらアクアリウムで使われている炭酸塩硬度の測定キットは、炭酸塩(HCO3-)のみを測定しているため、本来の炭酸塩硬度とは異なります。そもそも厳密には硬度ではなく炭酸塩濃度です。
アクアリウムのKHはいわばアルカリ度のほうが正しく、そのため人によっては炭酸塩硬度の呼称を避け、「アルカリ度」および「アルカリニティ」と呼ぶ場合もあります。
適切な炭酸塩硬度の目安と操作
KHというのはあくまでpHが下がりにくいかを示す数値にしか過ぎませんが、飼育しやすくなる炭酸塩硬度の目安を以下に示します。
※KHはこうじゃなきゃダメっていう数値では決してありません。
炭酸塩硬度 | |
---|---|
低pHを嫌う魚 | 2dH以上。高ければその分だけ飼育しやすい。 |
高pHを嫌う魚 | 0.5~2dH |
水草 | 2dH以下 |
基本的に高いpHでも大丈夫な魚であればKHが高い方がpHが変化しにくく飼育しやすくなります。
逆に低いpHを好む魚や水草の場合は、KHが低いと中々pHを下げれないため飼育に苦労します。
炭酸塩硬度の下げ方
炭酸塩硬度(KH)を下げる方法としては以下
- 底床をソイルにする(効果:小)
- ろ材にピートモスを入れる(効果:中)
- 純水器で炭酸塩を除去(効果:特大)
- KHが上がる薬品の投与(効果:危険)
ピートモス
ソイルでは中々pHが下がらない場合、一番手頃に使えて効果が高いものは「ピートモス」です。
ソイルにも下げる効果はあるのですが、一定期間使っていると効果が無くなります。
そこで上記のようなアクアリウム用に販売されているピートモスをネットに入れ、ろ材等に使うことでpH・KHともにいい感じに下げることができます。
ただ活性炭のような消耗品であり定期的な交換が必要になるのと、水が黒茶色に色づいてしまうことがデメリットです。
ピートモスは繁殖を促進する効果もあるため、アピストグラマなどの繁殖を狙うなど魚メインの水槽であれば好んで使われることもあります。
純水器・RO浄水器による炭酸塩の除去
水道水からH2O以外のものを取り除いて、「純水」にする浄水器(純水器・RO浄水器)を使えば、炭酸塩を除去することができます。
先述したピートでは水が茶色くなりますし、腐植酸も溶け出てき交換も面倒です。後述するKH降下剤では超過投与するとアッという間に魚が死にますし、別薬品を投与することによる化学的な置換なので不純物が出てしまいます。
対して純水器であれば水から不純物を取り除くだけなので話は非常にシンプル。純水器で作成した純水と水道水の配合比率を変えれば理想の低硬度水を実現可能です。
ただしやや大掛かりな装置が必要になるのでハードルは高め。設置場所もそうですが、純水器は2万~4万円程度で、RO浄水器は5万ぐらいします。
しかし低pH・低硬度しか繁殖しない熱帯魚を繁殖させたり、相当な水草フリークスであればメリットは大きいでしょう。
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KH低下する薬品
アクアリウム用にKHを下げる薬品が市販されていますが、それを使ってもKHを下げることが可能です。
しかし薬品はほんの少しでも使いすぎると水質が急変して、水槽の魚が全部死んでしまうリスクがあります。
そのようなデメリットがあるため、KHを下げる薬品はあまり使われません。(玄人向け)
炭酸塩硬度の上げ方
炭酸塩硬度(KH)を上げる方法としては以下
- ろ材にサンゴ砂・カキ殻を入れる(効果:大)
- 水槽内に小さくない石を複数入れる(効果:中)
- KHが上がる薬品を使う(効果:危険)
水草水槽では龍王石や青華石など比較的硬度が上昇する石が使われることも多く、意図せずKHを上げている場合があります。
KHを上昇させるのに最もメジャーなのはサンゴ砂・カキ殻を利用する方法です。
アフリカンシクリッドなど高pHを好む魚には必ずと言っていいほどサンゴ砂をろ材に入れますが、別に高いpHを維持する必要がないポリプテルスなどの大型魚でもサンゴ砂・カキ殻をろ材を入れることが多いです。
理由としてポリプテルスなどの大型魚は排泄物の量が多く何も対策していないとpHがガタ落ちする傾向がありますが、サンゴ砂・カキ殻によりKHを上昇させることにより、pHのガタ落ちを抑え、水換え時のpHショックを防止することができるようになります。
(大型魚の中には低pHを好むのもいますのでその点は注意)
なお薬品によるKH上昇は水質急変のリスクがあるということもそうですが、サンゴ砂・カキ殻が簡単に継続的な効果があるのでほぼ使われません。
(余計なリスクあってコストもかかるので・・・)
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