水換え不要な海水水槽の作り方
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淡水水槽では換水が不可欠で、面倒くさい水換え作業を定期的にやらなければなりません。
水換え不要を謳うものはどれもうさんくさいものばかり。
しかし海水水槽では換水をしない水槽が理論的に十分作れちゃいます。
水換え不要な海水水槽を作るためのアレコレをご説明します。
目次
そもそも換水する理由とは?
水換えをしないとどうしてダメなのでしょうか。
そもそも水換えの主目的は「硝酸塩の除去」にあります。
魚から出される排泄物は「アンモニア」という害のある物質で、これが汚れの根本になります。
フィルターは生物濾過によりアンモニアを毒素の低い「硝酸塩」に変換して浄化を行います。
しかしながらこの硝酸塩は毒素が低いとはいえ量が増えれば害。
日数経過により少しずつ蓄積していき、魚にダメージを与えてしまいます。
高性能なフィルターを使ったところで硝酸塩自体を処理することはできないのです。
そんな蓄積した硝酸塩を吐き出すために行うのが換水という作業ですね。
水換えなしを実現する仕組みというのはフィルターじゃどうにもできない硝酸塩をどうにかすることがミソになります。
海水なら無換水が実現するワケ
硝酸塩は微量ながらですが水草による吸収や嫌気性バクテリアという細菌により吸収または分解されています。
しかしながら生成される硝酸塩に対して、ほんの僅かしか処理できないのです。
にもかかわらず海水で水換えなしを実現できるのは「プロテインスキマー」が使えることにあります。
汚れの元を断つプロテインスキマー
プロテインスキマーはフンやゴミなどを水槽外に吐き出す浄化装置です。
つまりフンなどがアンモニアになる前に除去するのです。
アンモニアが無ければ当然硝酸塩も蓄積しませんので、プロテインスキマーが全てのフンを排出できれば硝酸塩はほとんど溜まらなくなるというワケなのです。
プロテインスキマーの設置
つまり水換えをしない海水水槽はプロテインスキマーの性能を活かして汚れそのものを蓄積しないシステムを構築する、というものです。
「プロテインスキマーの浄化 > 生体の排泄」となるようにしなければなりません。
当然ながらプロテインスキマーはできるだけ強力なものを使った方が良く、性能が良いほど飼育できる魚の数が増えます。
横45cmの私の水槽では強力なプロテインスキマーを使って「キイロハギ1匹」、「カクレクマノミ3匹」、「ロイヤルグラマ1匹」、「小型スズメダイ4匹」、「ニセモチウオ3匹」、「ナンヨウハギ1匹」、「カエルウオ1匹」、計14匹も無換水で飼育できています。
※補助にリフジウムを使っています。
ベンチュリー式のプロテインスキマーを選ぼう
水換えなしを目指す上ではベンチュリー式と呼ばれる強力なプロテインスキマーがオススメです。
ウッドストーンを利用したエアーリフト式のものと比べ非常に強力で、プロテインスキマーとしてしっかり仕事をこなしてくれます。
サンプに入れる大型のものが多いですが、小型水槽でも使用できるカミハタの海道達磨やレッドシーのプリズムスキマーもあります。
エアーリフト式だと1~2匹程度しか飼育できないのでできるだけベンチュリー式を選ぶようにしましょう。
水流を作ってプロテインスキマーの性能を引き出す
どんなに強力なスキマーを使っていてもプロテインスキマーに処理されなければ意味が無く、くぼみや水の流れが無い場所にフンが落ちれば汚れとなってしまいます。
それを解決するためにはウェーブポンプを設置してゴミが溜まる場所が無いように水流を発生させます。
水流によりフンがプロテインスキマーへ到達するようになるので、今まで処理できなかった汚れの元を除去できるようになります。
強力なプロテインスキマーを設置することより優先度は下がりますが、性能を引き出す上では是非ともウェーブポンプを設置しておきたいところ。
特に大きな水槽であれば汚れが溜まりやするので45cm以上の水槽なら是非とも欲しいですね。
フィルターは不要
フンはプロテインスキマーで処理してしまえば硝酸塩にすらなりませんが、フィルターに吸い込まれるとフィルター内でアンモニアおよび硝酸塩に変わってしまいます。
水換え無しシステムを目指す上で好ましくなく、硝酸塩の発生源になりうるフィルターは必要ありません。
フィルターが無いと心細いかもしれませんが本来フィルターが行っていた生物濾過は後述するライブロックが担うので撤去してしまいましょう。
ライブロックの設置
いくら強力なプロテインスキマーを使っていても取りこぼしは必ずありますし、魚の尿はアンモニアそのものなので硝酸塩の生成を完全に0にすることはできません。
しかしながらプロテインスキマーにより汚れの元を多く減らせば、生成される硝酸塩は僅かであり処理しきることが可能であります。
硝酸塩の除去で最も効果的なのがライブロックです。
ライブロックにいる嫌気性バクテリア
ライブロックの奥には嫌気性バクテリアという硝酸塩を食べて窒素に変えてしまうバクテリアが存在しています。
つまりライブロックを設置することで僅かに溜まった硝酸塩を処理することができるのです。
嫌気性バクテリアが働き始めるまで時間がかかる点に注意
ただしライブロック内の嫌気性バクテリアが稼働するようになるまで時間が必要です。
買ってきたライブロックは新しい環境に馴染めず多くのバクテリアが死滅してしまうからです。
少しずつ環境に馴染んだバクテリアが増殖していきますが、機能し始めるまでは1ヶ月ほどかかり、そこからフルパワーまでは半年程度はかかってしまうので過信は禁物です。
しばらくの間は換水することも視野に入れて管理します。
ライブロックにいる好気性バクテリア
またライブロックの表面近くには好気性バクテリアというアンモニアを硝酸塩に変えるバクテリアも生存しています。
プロテインスキマーだけではアンモニアを処理することができませんが、アンモニアは非常に毒性が強く何らかの対策が必須。
ライブロックを設置すれば硝酸塩の除去に加え、アンモニアも処理することができるのでプロテインスキマーと非常に相性が良いのです。
本来フィルターが行う生物濾過ですがライブロックでも行うことができるのです。
硝酸塩の除去能力と比べて、こちらは1ヶ月もあればフルパワーで処理してくれます。
定期的な硝酸塩の測定
硝酸塩が蓄積されているかどうかを判断するには測定してみないと分かりません。
市販の測定キットを使って問題が無いかどうかをチェックする必要があります。
硝酸塩が0に近いまたは減少傾向にあれば問題ないと言えますし、増加傾向にあればキャパシティオーバーであるということが分かります。
定期的な硝酸塩の測定を行い硝酸塩の増加状態をチェックすることが重要です。
高すぎる場合は換水を行うことも必要でしょう。
硝酸塩が増加傾向にある場合は対策を行う
特に魚を入れると硝酸塩の生成量が増加するのでキャパシティを超えてしまいやすいタイミング。
もし硝酸塩が増加傾向にあるのであれば魚の数を減らす、スキマーをスペックアップする、水流を見直す、などの対策を行ったほうが良いでしょう。
ライブロックが本調子じゃ無い場合は、調子が戻るまで少しの換水でやり過ごすというのも手です。
水換え無し水槽を維持するポイント
水換え無しシステムを維持するためにはいくつか注意するポイントがあります。
注意点を知っておいて失敗しないように気を付けましょう。
エサの与え方
餌を食べ残してしまうと硝酸塩の増加につながりますので、残さないように餌を与えるのがポイントです。
少しずつ小出しにし底に落ちてしまうエサが無いように与えましょう。
そうすることで余計な硝酸塩の発生を予防することができます。
水面下のエサを食べてくれない場合はスポイトなどを使ってエサを与えると良いでしょう。
サンゴ・海藻の栄養が枯渇しやすい
定期的な換水を行えば人工海水よりサンゴ・海水に必要な栄養を供給することが可能ですが、換水を行わないということは栄養が消費され続けることになります。
特に海藻は栄養不足の影響を受けやすく、栄養不足によるダメージで溶けてしまうことも。
そうならないためには市販の添加剤を使って栄養を補充する必要があります。
主要元素はもちろんですが、微量元素系やアルカリ度はすぐに失われるので特に添加が必要です。
ただし添加剤には有機物系のものがあり、それらは硝酸塩の元になってしまうため特性を把握した上で使わないと水が大幅に汚れてしまうリスクも。
趣旨とは外れてしまいますがヤバイと思ったタイミングで大換水を行うのが最も簡単でしょう。
関連サンゴに必要な栄養と添加剤の種類について。使い方と選び方
栄養が無くても育つサンゴ
サンゴの中には栄養を供給しなくても育ちやすいのもありますので、そのようなサンゴを中心にレイアウトして管理の手間を省くのも良いでしょう。
例えばスターポリプ、マメスナギンチャク、ディスクコーラル、ウミキノコ類、ウミアザミ、トサカ類などソフトコーラル系は無換水でも育成できます。
長期維持による栄養バランスの崩壊
栄養が不足することはサンゴだけでなく嫌気性バクテリアにも良い影響を与えません。
嫌気性バクテリアの活動に必要な栄養素が欠如してしまった場合、僅かに溜まっていく硝酸塩を処理できなくなるので、どれだけ高性能なプロテインスキマーを使っていても硝酸塩は増加してしまいます。
サンゴや海藻に比べてかなりの経過月数が必要ですが、水換え無しで維持しているといずれその壁にあたります。
そうなってしまった場合は水換えして栄養バランスをリセットする必要があります。
特にアルカリ度は下がりやすいのでこれだけでもモニターして、適正値になるように添加しておくだけでもグッと水槽を安定させやすくなります。
そのほかの硝酸塩対策
水換えなし水槽というのは「強力なプロテインスキマー+ライブロック」が主軸のシステムです。
ですがその他にも硝酸塩を蓄積しないための用品・設備があり、それらも併用することでより多くの魚を飼育できるようになったり、水槽の安定化を図ることができます。
硝酸塩除去剤
ここまで話しておいて「硝酸塩除去剤があるじゃねぇか!!」と思うのは待ってください(¬з¬)
市販されている硝酸塩除去剤は化学的に硝酸塩を分解するものでは無く、嫌気性バクテリアの活動を促す言わばバクテリアの餌なのです。
つまり硝酸塩除去剤を使うとライブロックの中の嫌気バクテリアが活性化・増殖して硝酸塩を分解する能力が上がります。
日常的に使えば飼育できる魚の数を増やせますし、魚を入れすぎた際の保険として使うこともできます。
またバクテリアの増殖スピードも上がりますので立ち上げ時に使用するのも良いでしょう。
そもそも使用にはプロテインスキマーが前提にもなっているので本システムとの相性も良いです。
関連意外とエコな海水水槽の硝酸塩除去剤とは!?仕組みや効果など!
海藻の育成
硝酸塩の除去は嫌気性バクテリアだけでなく、水草による吸収、つまり海藻を入れることでも処理できます。
ウミブドウやタカノハヅタなどの海藻を入れることにより硝酸塩を吸収してもらうことができ、より多く魚を入れれるようになります。
またメインタンクに海藻を入れず、サテライトやサンプを利用してリフジウムを作るのも良いでしょう。
関連魚の数を増やしたくてマッドシステムを使ったリフジウムを作ってみた!
まとめ、個人的な所感
水換え無し水槽の仕組みは「強力なプロテインスキマーを設置して汚れそのものを削減し、取りこぼしをライブロックでカバーする水槽システム」です。
この「プロテインスキマー」+「ライブロック」から成る水槽システムをベルリン式と言うこともあります。
強力なプロテインスキマーを主体にすれば水換え無しも十分可能で、水換え無しまではいかないまでも大幅に水換えを削減することが可能になるのです。
要点を箇条書きでまとめますね。
- 強力なプロテインスキマーにより硝酸塩に変わる前の有機物で除去するため換水が不要になる仕組み
- 僅かに発生した硝酸塩はライブロックで除去を行う
- プロテインスキマーとライブロックの浄化能力を超えないように魚の数を抑える
- 定期的に硝酸塩の測定を行って魚を入れすぎていないかをチェックする
魚を入れれる数はプロテインスキマーの性能に直結するので、できるだけ強力なプロテインスキマーが良いでしょう。
プロテインスキマー自体のスペックアップの他に、水流を発生して100%に近い性能を引き出すことも重要です。
また換水しない水槽は管理が楽になるほか、人工海水のランニングコストもかからなくなるメリットも。
せっかくの海水水槽、水替えをしないシステムを目指してみては如何でしょうか。
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