水草育成の基礎「水質」。抑えるべきパラメーターなど

水草育成では光や肥料の前に大前提となるのが「水質」で、水質があってないと水草を育てること自体が出来ません。

水質の重要性と水草育成で抑えるべき水質のパラメーター、水草に適した水質の仕方について解説します。

目次




水質の重要性

ポゴステモン・エレクタス

水草育成のビギナーは光や肥料などは重要なことに気づいてくれますが、実はそれらより前に抑えなくてはいけないのが「水質」です。

熱帯魚であれば水質があってないと飼育ができないとうのは常識的に知られていますが、実は水草でも同様で水質があっていないと育成することができません

ビギナーは水草育成がうまくいかないと照明などの機材が悪いせいだと思いがちなのですが、良い照明を使っても水質が悪ければ吸収できないのです。

水草にあってない水質は改善することでググッと育成効率および機材効率を改善できますので、水草に適した水質は必ず抑えておきましょう。

水草に適した水質とは?

pHテスター

どの水草も弱酸性の水質が基本で、数値的にはpH6.5以下を目安にします。

水草が低pHを必要とする最も大きな理由が「pHが高くなると光合成の効率が大きく激減する」ことです。

水草はCO2を利用して光合成を行いますが、水に溶けるCO2はpHが高くなるとHCO3-(重炭酸水素イオン)という別の物質に変化し、それらはpHによって変化の割合が決まっています。

pHと炭酸ガス融解度のグラフ(HCO3-)

上記はpH数値とそれら割合のイメージですが、pH7.0の中性まで高くなるとほとんどHCO3-になってしまいCO2はほぼ融解していません

つまり水草を育成する上では中性付近だとほとんど育たず、CO2の比率を考えるとpH6.5以下の弱酸性を保つのが育成の大前提となります。

HCO3-も十分利用できる水草

なお水草の中にはHCO3-でも十分光合成可能なものもいて、「アヌビアス」「ミクロソリウム」「アマゾンソード」などいわゆる一般的に丈夫とされている水草達がHCO3-を多く利用できると言われています。

ただし上記水草でも当然ながらpHを下げた方が生育は良くなります。

pHの測定

水草の生育がイマイチな場合は機材を見直す前にまずはpHを疑うのが基本です。

pHは市販されている「pH試薬」または「pH測定器」で簡単に測定を行うことができます。

以下はテトラのpH試薬を使った水質測定例です。

テトラの測定容器に水を注いでる様子

付属の容器に飼育水を注ぎます。

テトラのpH試薬でpHを測定している様子

規定量のpH試薬を投与します。

テトラのpH試薬を混ぜ合わせている様子

混ぜ合わせます。

テトラのpH試薬でpHを読み取っている様子

付属のカラー表と照らし合わせて、最も近い色の数値がpH測定値になります。

写真の感じだと「pH6.0」でありますので、水質は問題ないことが分かります。

逆に以下のように「pH7.0」をマークした場合は水草的にはかなり厳しい環境であることが分かり、この場合だと健康に育成できる水草はかなり限られてしまいます

pHテスターpHが高い場合は丈夫な水草に限定するか、何らかの手段でpHを下げること。

水草に適した水質にする手段

地域にもよりますが水道水はおよそpH7.0であるため、そのままだと水草の育成には適していません。

そのため水草を育成する上ではpHを下げることが基本的に必須となります。

底床にソイルを使用する

ソイルが敷かれた60cm水槽

底床である「ソイル」は水を酸性方向に傾ける働きがあり、この点からも水草育成がしやすい底床です。

製品や水道水にもよりますがソイルを使えば6.8以下にはなりやすいです。

逆に砂利系の底床を使っている場合だとpHの上昇作用があるため、水草の育成は難しくなります
(自然由来の底床を使用する場合はpHの上昇作用がほとんど無いものを見つける必要があります!)

CO2の添加を行う

水中にCO2を添加している様子

水中のCO2濃度が上昇するとpHは下がる作用があるため、CO2添加を行えばググッpHを下げれます。

ソイルだけではpH6.8止まりだったり、そもそもソイルを使いたくない場合はCO2添加が非常に有効です。

CO2濃度のアップは光合成の活性化という点でもメリットがありますので、水草育成では是非ともCO2添加を行いたいところです。

水槽内に石をおかない

龍王石

石は素材にもよりますが、硬度を上昇させpHを上げる作用があります。

そのため石を設置している場合は石を撤去した方がpHは下がりやすくなります。

水草レイアウト水槽では景観のため大きな石を設置することも多いのですが、石を使用する場合はCO2添加などを併用しpHが高くならないようにする工夫が必要です。

補足的な要素:硬度

テトラのKHテスト方法

水草の水質については基本的にpHを抑えておけば良いのですが、一部の水草は「硬度」のパラメーターが重要になりますのでこれに触れておきます。

ほとんどの水草は低い硬度を要求しますが、pHが低下すればおのずと硬度は低くなるためpHさえ気にしていれば硬度はあまり気にしなくてもOKです。

ただし硬度をある程度上昇させないと育たない水草が極一部存在し、それら一部の水草を育成する場合にのみ硬度を気にする必要があります。

ポゴステモン・ヘルフェリーの水上葉と水中葉硬度がある程度要求する「ポゴステモン・ヘルフェリー」

通常、水槽内に石を設置するとpHが上がってしまうので生育が悪くなりますが、それらの水草を育成する場合は多少の石を設置して硬度を上げてやるのが育成のキーになります。

とはいえほとんどの水草はpHさえ見ていれば事足りますので 硬度に関しては気にしなくてもほとんど問題はありません。
(私も先程のポゴステモン・ヘルフェリーしか硬度が必要な水草を確認できていません。それぐらい極一部です。)

よくある質問

ソイルを使っていてもpH6.5にできません。

水道水の硬度が高いとソイルだけではpHが下がりません。そのようなケースはCO2添加装置やRO浄水器などを併用する必要があります。
校舎裏の水飲み場

地域によっては水道水の硬度が高い場合があり、そのような地域にお住まいの場合はソイルを使ってもpHが6.8と弱酸性の水質にならない場合があります。

信じがたいことですが同じショップに通っている人で同じソイル・同じ素材を使っていても、浄水場の地区が変わるだけで水草が普通に育成できる人とできない人に分かれてしまうことが実は結構あります。

そのような水道水の場合はソイルに加えてCO2添加により更に一段とpHを下げることが必須になります。

更に一部地域では水道水の硬度が非常に高い場合があり、ソイル+CO2でもpHが下がらない場合もあります。

そのような場合は、RO浄水器やADAのカオチンフィルターを使って水道水そのものから硬度成分を除去しないと水草育成は困難です。

魚を多く入れてpHを下げようと思いますがどうでしょうか?

魚を多く入れればpHを下げることができます。ただしコケが生えやすくなるリスクとpHコントロールが難しくなる点には注意しましょう。
グローライトテトラの赤系水草

魚から排出されるフン・尿はpHを低下させる働きがありますため、魚を増やせばpHは下がりやすくなります。

ただしフン・食べかすが出ることでコケが生えやすくなり、逆に水草の生育が阻害される場合もあるのには注意が必要です。

またフン・尿でちゃんとpHを低く保つためには、常にpHを把握してそれにより魚の量・水換えの割合・頻度などを考える必要があるため管理の手間も増えます

多く魚を入れてるつもりでも実は水換え翌日はpHが7.0だったということもあるため、フン尿によりpHを下げる場合はpH測定器を使って常に把握する必要も出てきてしまいます。

そのため水草育成のために魚を多く入れるのは一般的に用いられていません

pH測定器による水草水槽のpH測定(マーフィードエコペーハーDUO)測定頻度を考えるとpH試薬では測定が非常に手間になりますのでpH測定器推奨。

パールグラスは硬度があった方が良いと聞いたが?

無くても普通に育つので気にしなくても良いです。

パールグラスは硬度があったほうが良いというのはとても良く聞きますが、硬度が無くても全く問題なく育ちますので気にしなくてもOKです。

どちらかというと硬度があっても育つといった方が正しいように思います。

もしパールグラスが育成できなくて困っている場合は、必ず硬度以外に原因がありますので一度環境を見直してみましょう。

パールグラスが中央に生えている水草水槽パールグラスはかなり低い硬度でも育つので気にしなくても良い。

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