アピストグラマ sp.”ヴィエジタⅢ”(VⅢ,V3)の特徴・飼育情報

アピストグラマ sp."ヴィエジタⅢ"

学名
他の販売名
アピストグラマsp."Schwarzkehl"(シュワルツケール)。※注、VⅢのバリエーションの1つをシュワルツケールと区別して呼ぶことがある。シュワルツケールはVⅢで間違いないが、VⅢであってもシュワルツケールとは限らないので注意。
大きさ目安
6cm
飼育難易度

気をつけたい

適応水質
弱酸性中性弱アルカリ
水温目安
22~29℃(普通の熱帯魚)
繁殖難易度
性格
注意点あり
遊泳タイプ
底を中心にパトロール
群れやすさ
群れない
価格目安
ペアで9,000~13,000円

目次




主な特徴

「アピスグラマsp.”ヴィエジタⅢ”」および「VⅢ」はコロンビアを中心に輸入されてくるアピストグラマの一種。
(読みはビィエジタスリー,ブイスリー)

南米シクリッド愛好家に古くから親しまれている「Kleine Buntbarsche(Amerikanische Cichliden I)」という洋書図鑑にて、アピストグラマ・ヴィエジタのカラータイプが3枚掲載されており、それを元にヴィエジタⅠ、ヴィエジタⅡ、ヴィエジタⅢとカラーごとに区別して呼ばれるようになりました。

ヴィエジタⅢは基本的に産卵から保育後しばらくの間までメスの喉が黒くなるのが最大の特徴です。

なお現在はコロンビアのアピストの開拓・究明が進み、ヴィエジタⅠが「Apistogramma viejita」種であり、ヴィエジタⅡとヴィエジタⅢはヴィエジタ種ではないとする見解が一般的になっています。

このため愛好家によっては「ヴィエジタでもないのにヴィエジタの名前を冠するのはおかしい」ということでこの呼称を嫌う人もいます。
(その場合はsp.”Schwarzkehl/Black-throat”【シュワルツケール/喉黒】の呼称を用います)

アピストグラマsp. "ヴィエジタスリー"
アピストグラマsp. "ヴィエジタ3"の顔
アピストグラマ sp. "ヴィエジタⅢ"のメスメスの産卵~保育時の喉が黒いのが特徴的。
色揚げされたアピストグラマ sp. "ヴィエジタⅢ"ブラインによる色揚げ状態

混泳・性格

温和なアピストグラマですが、超温和系のアピストグラマと比べるとメスへのあたりがありますので観察は必須です。

シクリッド以外の魚に関しては大体無関心ですので、ネオンテトラを始めとする小型テトラやラスボラ、コリドラスなどとの混泳は全く問題ありません。
(あとベタやグラミーなどのアナバスもシクリッドに近い仲間でやや相性が悪いところはあり)

基本的にメスをおいやって殺してしまうことはあまりないアピストグラマですが、アピストグラマ・ボレリィやホングスロイなどの超温和アピストグラマと比べるとメスを追いやる傾向が少しだけあります

アガシジィほどメスへのあたりはありませんが、観察は行いもしメスが追いやられ気味であれば何らかの対処が必要です。
(流木追加、レイアウト変更、水槽のサイズアップ・・・etc)

水槽隅に追いやられたアピストグラマこのように水槽の上隅やフィルター上端近くに追いやられている場合は対処しないと死ぬことが多い

エサ

エサは何でも食べます。最も適しているのは沈下する人工飼料です。

アピストグラマ・アガシジィ”ダブルレッド”のエサを食べている様子人工飼料を食べるアピストグラマ

入荷時は輸入のストレスでエサを食べないことがありますが、その場合は数日は与えないでおき嗜好性の高い赤虫から給餌を始めます。

赤虫に安定して餌付いた、もしくはショップで餌付けされているようであれば「グロウ C」、「デルフレッシュフード S~M」などの沈下する人工飼料を与えていきましょう。慣れれば浮上エサでも食べに来ます。

なお輸入直後で極端に弱っている個体に人工飼料を食わせてしまうと臓器に負担をかけてしまうので、弱り具合によっては孵化したブラインシュリンプでケアしていく方が望ましい場合があります。
(とはいえこの辺は問屋~ショップで行われているので通常は必要なく、基本は赤虫もしくは人工飼料スタートでOKです)

飼育ポイント・注意点

アピストの中では容易種です。ただしpHが中性では本調子が出ないので「弱酸性」~「弱酸性寄りの中性」になるように工夫する必要はあります。

基本的に入門系のアピストグラマが飼育できていれば問題なく飼育が可能なアピスト容易種です。

水質は弱酸性~弱酸性寄りの中性、pH的には6.5以下であれば概ねOKです。

pHをあげない砂・ソイルどちらも使用可能ですが、地域・時期によっては水道水がpH7.5やpH8.0が測定される場合がありますので、その場合はソイルを使った方が調子は維持しやすいでしょう。

水換え直前、水換え直後、水換え2日後など要所要所でpHを測定していればベターと言えます。

あと強いて言えばアピストグラマ・ボレリィやホングスロイと比べるとメスへのあたりがほんの少し強いので、メスがおいやられてないかは観察するようにしましょう。
(とはいえメスへのあたりは無い方のアピストなのであまり気にしなくても良いかも)

pHテスターpH測定は慣れてくればあまり使わなくなることもあるが、入門者は適宜測定した方が飼育が上達しやすい。

繁殖

繁殖は容易で、産卵セットを組めば十分繁殖を狙うことが可能です。

洞窟状の狭くて暗い場所に卵を産む「ケーブスポウナー」であるため、産卵場所になりそうな流木か、100均などで売られている小さな植木鉢を割って産卵場所を用意しておきます。

産卵場所があって状態良く飼育できていればそのうち産卵に至りますが、他に魚がいるとストレスで食卵してしまうので基本的にはペアのみを水槽に入れるのが望ましいです。
(ごく少数のオトシンクルス、エビ程度であればそこまで障害になりません。もちろん本当にペアのみにするのがベターですが)

アピストグラマの繁殖セット(VⅢ)産卵セットの一例。
40cm水槽(カラースリーL)にスポンジフィルター+ソイルで、生みそうな流木+割った植木鉢をセット。
この状態で調子良く飼っていると半年に一度は勝手に産むくらい繁殖は容易。

産卵から稚魚浮上まで

暗くて狭い場所に産むため基本的には卵を見ることはできませんが、産卵した場合メスの黄色がひときわ強くなり産卵場にこもりっぱなしになるのでそれを目安とします。

アピストグラマ・ヴィエジタⅢのメス親と稚魚たち

産卵後5日頃に稚魚が巣穴から出てきてエサを探し始めるのでそのタイミングで与えられるように予めブラインシュリンプを用意しておきましょう。

稚魚のエサやり回数は朝・晩の2回が最低ラインと思って、できれば1日に何度も与えるようにするのがベターです。

その後しばらくはブラインシュリンプが主食になりますが、成長にあわせて砕いた人工飼料や冷凍アカムシなどを交えていきます。

なおオスは稚魚の保育に関与しないのと保育中は逆にメスから攻撃されがちになるため、可能であればどこかのタイミングで取り出しておくとベターです。

個人的な所感

鏡に威嚇するアピストグラマsp. "ヴィエジタⅢ"

ヴィエジタⅢは洋書である「Kleine Buntbarsche(Amerikanische Cichliden I)」(通称テトラ本!)にヴィエジタとして掲載されている写真のうち、カラータイプの3番目ということが名前の元です。

ちなみに「Kleine Buntbarsche(Amerikanische Cichliden I)」はドイツの出版社「Tetra Verlag GmbH」が出していることから通称テトラ本と呼ばれます。

ただ冒頭でも触れましたがヴィエジタ(Apistogramma viejita)でもないのに、ヴィエジタのバリエーションみたいな名前を冠するのはおかしいということと、シュワルツケールも含め名前の範囲が愛好家によって異なる場合があり、ちょっとした名前のややこしさがあります。

更に近年ではDナンバーという新たなアピストの識別番号もショップ・愛好家間に浸透し、アピスト入門者的には「どれがどれなんだ?」となおややこしくなっています。

シュワルツケール、VⅢの定義については愛好家によって異なりますが、VⅠとVⅡとの違いも含め現状の(私の)見解を紹介しておきます。

sp. “Schwarzkehl/Black-throat”(シュワルツケール)

アピストグラマ sp. "シュワルツケール"のメス。喉が黒い喉が黒い

シュワルツケールの意味は「喉黒」つまり喉が黒いアピストグラマの意味なのでsp. “シュワルツケール”はVⅢです。

海外ではVⅢよりこちらの方が好ましい名前とされています。
(ヴィエジタでも無いのにヴィエジタの名を冠するのはおかしいということで)

sp. “ヴィエジタⅢ(VⅢ)”

アピストグラマsp. "ヴィエジタⅢ"

日本ではヴィエジタⅢの名前に抵抗がある愛好家が少ないので(現状は)VⅢの名前が浸透しています。

逆にVⅢという名前がかなり浸透しているせいか、例えば「コロンビア便で来たアピスト、なんかテトラ本のヴィエジタⅢっぽいのが来たけどちょっと差異があるなぁ」となっても結局VⅢのくくりで名前で売られることもありますし、D25と呼ばれるアピストなんかもVⅢの名前で売られることもあります。

ようするにVⅢのネーム範囲が結構広いのです。

アピストグラマ sp."ヴィエジタⅢ"(ビェジタ3)の若魚若魚。
色がまだ出てないサイズも入荷されることが多いが、どう育つか想像しながら育成するのもまた醍醐味。
アピストグラマ sp. "ヴィエジタⅢ"若魚その後。

VⅠ

VⅠというのは本来のヴィエジタ(Apistogramma viejita種)です。

ヴィエジタ種はコロンビアの代表的なアピストですが、実は本当のヴィエジタ種は長らく入荷がなくマニアが待ち望んでいたアピストグラマでした。
(ヴィエジタの名前で入荷されてもよく似たアピストグラマ・マクマリスティ「Apistogramma macmasteri」ばっかり)

今では記載地のプエルトガイタンから本当のヴィエジタ種が輸入されるようになり、”リアル”ヴィエジタという名前で販売されることもあります。

ちなみにショップで販売されている「アピストグラマ・ヴィエジタ スーパーレッド」とかヴィエジタ普通に売られてるじゃんと思うかもしれませんが、あれはマクマリスティもしくはマクマリスティとヴィエジタとのハイブリッドで、viejita種ではありません。

アピストグラマ ヴィエジタ スーパーレッド「ヴィエジタ スーパーレッド」の名で売られる改良アピストグラマ。
これはヴィエジタというよりマクマリスティの改良品種とされる。

sp. “ヴィエジタⅡ(VⅡ)”

VⅡはVⅢとくらべて特に頬の赤が多く入るのが特徴的なコロンビアアピストで、sp. “Red-flecked/Rotflecken”の別名を持ちます。
(ロートフロッケンの意味は「頬が赤い」という意味)

これもテトラ本ではヴィエジタのカラータイプ2として紹介されていますが、近年ではヴィエジタ種ではないだろうとする見解が一般的で、これもまた海外ではロートフロッケンと呼ぶ方が好ましいとされます。

DナンバーのD28,D25もVⅡと呼ばれることがあります。
(ただし愛好家によりD25はVⅢとグルーピングされることもあり、このへんは意見が分かれます)

なおVⅡはVⅢと比べて入荷がかなり少なくレアです。近年ではVⅠは結構入ってくるようになりましたが、VⅡは引き続き輸入が無いので目にする機会は非常に少ないでしょう。

・・

なおこういったコロンビアのアピストグラマはどうしてもコロンビアアピストに強いお店じゃないと中々入れてくれないので、もし興味があるならショップめぐりの際「どんな産地のアピストグラマを入荷しているか?」を見てみると良いショップが見つかりやすいですよ。
(ブラジル?ペルー?EUブリード?コロンビア?)

^ワ^

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