オーストロレビアス・ニグリピニスの特徴・飼育情報
更新:
オーストロレビアス・ニグリピニス
気をつけたい
弱酸性 | 中性 | 弱アルカリ |
---|---|---|
◎ | △ | ✕ |
主な特徴
「オーストロレビアス・ニグリピニス」はアルゼンチンの平野に住む卵生メダカです。
黒をベースに非常にきれいな多数のパール模様を持ち、別名「アルゼンチンパールフィッシュ」とも呼ばれる美麗な熱帯魚。
現地では雨季と乾季のある低草の生い茂った平野の水たまりに生息していますが、乾季になると水が干上がってしまうような過酷環境に生息しています。
乾季を生き抜くために耐久卵と呼ばれる乾燥に強い卵を産卵して、卵のまま水が干上がった乾季を乗りるという生態を持ちます。
(親魚はそのまま干からびて死んでしまいます)
卵は雨季が来ると発生(細胞分裂)が始まって水たまりに孵り、また乾季が来る前に耐久卵を産む・・・という非常に変わった生活史。
雌雄差はオスの方が美麗な模様を持ち、メスは地味で一回り小さいです。
オスは5~6センチほどに対し、メスは4~5センチです。(飼育下)
混泳・性格
オス同士で軽度のケンカをするため、水槽内に収容するオスの数は調整する必要があります
同種のオスとはヒレが欠ける程度の喧嘩はするので、M水槽(横36cm×奥22cm×高さ26.2cm)にオスは2~3匹程度が好ましいでしょう。
他魚についても同サイズの魚との混泳は可能ですが、寿命が1~1.5年と短く次の世代の卵を採卵しないと長期的に飼育することができないため、水槽内には本種メインにするのが好ましいです。
採卵する場合は同種の魚を1匹のオスに対しメスを2~3匹とハーレムを作ることで採卵しやすくなります。
エサ
慣れれば人工飼料や冷凍アカムシも食べますが、活餌の方が好ましいです。
グリンダルワームやイトミミズ、ブラインシュリンプのような活き餌のほうが採卵数は多く感じるため、与えられるなら活餌が良いでしょう。
もし人工飼料を与えるなら浮上性の強いエサではなく「おとひめB2」のようなゆっくり沈下するエサが好ましいです。
飼育ポイント・注意点
「オーストロレビアス・ニグリピニス」は産卵させて累代飼育することが一般的な飼育方法になりますので、それを見越して飼育を意識する必要があります。
一般的なの熱帯魚(ネオンテトラやエンゼルフィッシュ)は一匹の魚を時間をかけて育てていったり、複数匹群れさせて楽しむ魚です。
オーストロレビアス・ニグリピニスは卵生メダカの中でも年魚(自然下では1年以内に生活史を終える魚)と呼ばれるグループであり、寿命が一般的な熱帯魚と比べると非常に短命で1年ほどしかありません。
そのため本種の飼育スタイルは一般的な熱帯魚とは根本的に異なり、(長期的に飼育するなら)産卵を前提にした飼育で次の世代を残すことが大前提になります。
繁殖
繁殖は容易ですが、耐久卵・ピートダイバー特有の手間はかけないと繁殖は成功しません。
孵化後約3ヶ月で成魚になり、色が出きってない頃からでも産卵行動を始めます。
成魚になったら極力メスを太らせて抱卵させ、オスの繁殖行動に参加させるのが初心者が簡単に採卵するポイントになります。
産卵
産卵形態は特殊で「ピートダイバー」と呼ばれるピート(土のようなもの)にペアで体を突っ込み、10センチほど潜って産卵します。
これは乾季になって干上がった場合、地面表面部だと乾燥してしまうのである程度深く潜って産卵することにより、乾季になっても卵の周りを湿気で保つことができるためです。
飼育内でピートダイバーを再現するためにはコップ等に10センチほどピート(市販の長毛ピートや粉ピート)をいれ、それをそのまま水槽に入れます。
長毛ピートを使う際はそのまま使うとダイブした際に絡まって中で死んでしまうことがあるので、それを使用する場合は細かく切って魚が絡まないように工夫が必要です。
熱帯魚用品でよく売られているピートモスであるリッツインターナショナルの「PH無調整ピートモス 200g」は、長毛ピートになりますので細かく切ってあげましょう。(下の製品)
卵の取り出しと保管
卵は水中のまま入れておいても孵化することはなく、孵化のためには乾季を疑似体験させる必要があります。
ピートにダイブしてるのが確認されてから2~4週間でピートを取り出し、目の細かいネットやタイツなどで水が出なくなるくらい強く絞り水気を取ってやりましょう。
(年魚の卵は比較的強いので多少絞ったくらいじゃ潰れません)
絞った産卵ピートはジップロックなど密閉容器に入れて日付を書いて保存します。
孵化のさせ方
ジップロック等に保存した産卵ピートは、1ヶ月に1回卵を確認し目が出ているかどうかをチェックします。
目が出ているようであれば卵のチェックを一週間に1回に引き上げ、目の周りに金色の輪が出ていないかを細かくチェックするようにしましょう。
目の周りに金鱗が出ていたら飼育水の入ったフタ付きの容器にピートごと卵を入れ、100回ほど容器を強く振って雨季が来たことを卵に知らせます。
卵を水につけるタイミングは早ければ出てこないか出てきても成長が遅れるだけでそこまで問題にはなりません。
それに対して遅ければほとんどがベリースライダー(疾患の一種)になり次の子孫が残せなくなるという大きなデメリットがあります。
もし早すぎて出てこなかった場合はもう一度ピートに戻し、1週間後にまた水につけて孵化を促しましょう。
稚魚の育成
飼育水でシェイクした後はタッパーや小さい水槽など、稚魚がエサにありつきやすいサイズ感の水槽に移して育てていきましょう。
サテライトなどの隔離箱は水が循環されすぎて一緒に入ったピートから湧くインフゾリアが流れてしまいそうで個人的には使っていません。止水で管理するのがベターかと思われます。
生まれてきた稚魚はビネガーイールやマイクロワーム、生まれたてのブラインシュリンプなどを与えて育成します。
順調に育てばまた3ヶ月後には繁殖行動を行うようになります。
個人的な所感
「オーストロレビアス・ニグリピニス」を含む年魚は卵の休眠期間があったり、寿命が短かったり手のかかる魚たちです。
しかし1度見れば虜にしてしまうような美しい体を持ち、自然界で生き抜くための生存戦略を水槽という小さな環境で観察できるのが1番の魅力だと思います。
その年魚の中でも比較的卵が大きく稚魚も育てやすい、そして美しい「オーストロレビアス・ニグリピニス」は年魚の入門種として最高の魚だと思います。
是非一度飼育してみてください!
文・写真/Toya Shimomura
編集/犬水ジュン
(本写真の権利はToya Shimomura氏に属します。無断転載はご遠慮下さい。特にアフィリエイターとYOUTUBERの方)
シェアしてね!
Sponsored Link
Sponsored Link
この記事へのコメント